研究概要 |
平成24年度は、CaMKII分子メモリの発見を成果としてまとめ、論文誌に投稿した。平成25年度は、北米神経科学学会において研究成果の発信を行うと共に、CaMKII研究の大家であるコロラド大学のUlrich Bayer研究室への訪問と議論、査読コメントに対応するための追加実験を行った。投稿原稿はBiophysical journal に受理され、平成25年度中に発表された。掲載誌のNews and Notableにて”First Demonstration of Bistability in CaMKII, a Memory-Related Kinase”という見出しで紹介されると共に、Faculty of 1000に推薦されるなど、各所で高い評価を頂いている。 また、発見したCaMKII分子メモリのBistabilityの観点に基づく数理モデル化を行い、メモリ特性の再現に成功した。ただし、CaMKII分子メモリはそのメカニズムがBistabilityに基づいていない可能性もあり、今後もより正確なモデル化を試みる予定である。 さらに平成25年度は、応用の一環として、第一に開発したCaMKIIモデルに基づいて側坐核有刺細胞におけるシナプス可塑性のシグナル伝達モデルの開発を行った。第二に、CaMKIIのようなBistable システムが、分子少数しか存在しない極小シナプスにおいてどのような振る舞いを示すのか検討するために、小脳プルキンエシナプスのCa2+スパイク現象を対象に少数分子のモデルシミュレーションを行った。第三に、ニューロン-グリア回路の統計的回路推定を行う理論的研究に対して、生物学的側面からの支援を行った。
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