ポリグルタミン病病態において機能低下が強く疑われる分子Ku70、HMGB1、YAPdeltaCに着眼した新たな治療法の開発を試みることを目的として、ハンチントン病モデルマウスまたは脊髄小脳変性症1型モデルマウスをKu70あるいはHMGB1、YAPdeltaCトランスジェニックマウスと交配し、治療効果の有無を検討した。 その結果として、いくつかの組み合わせで治療効果が認められたが、脊髄小脳変性症1型モデルマウスにHMGB1を過剰発現した際に、非常に有意な運動機能の改善と生存期間の延長、さらには小脳の病理形態学的な改善が観られ、3つの候補遺伝子のうち最も優れた治療効果を認めた。 また、最も優れた治療効果が得られたこのマウスを用いて、その分子メカニズムの解析を行い、いくつかの新たな知見を得ている。同時に、発症初期である5週齢の脊髄小脳変性症1型モデルマウスにAAVウイルスベクターを用いてHMGB1を過剰発現した際にも、有意な運動機能の改善と小脳の病理形態学的な改善を認めた。 これらの結果はポリグルタミン病に対する新たな治療法開発への可能性を示唆している。
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