研究課題/領域番号 |
23700377
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
秦 嶺 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (20432156)
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キーワード | auditory cortx / sound discrimination / temporal code / rate code / spike activity / neuralmetrics |
研究概要 |
平成23年度には我々はネコの大脳一次聴覚野(AI)を中心に音声刺激に対する神経細胞の電気活動を記録した。平成24年度には我々は研究の範囲を一次聴覚野以外の高次聴覚野へ拡大した。猫の大脳聴覚野はAI以外に前聴覚野(AAF)、後聴覚野(PAF)、二次聴覚野(AII)、側頭野(Te)など数多く存在する。今まではこれらの高次聴覚野は音声弁別にどのような役割を果たすかまだ不明である。我々は今年度にはまずAIの前と後ろに存在するAAFとPAFの神経活動状況を研究した。二匹の猫を使って両側脳から合計300個以上の単一神経細胞活動を記録した。電気生理実験後の組織切片から確認してAAFとPAF以外から記録した神経細胞活動を除外した。結果として、AAF神経細胞の音反応がPAF神経細胞より早いが、神経発火反応の時間変化パッタンは単一である。つまりAAFには音刺激の開始と終了時に瞬間的な発火反応を示す神経細胞が圧倒的に多いが、音刺激の持続中に発火反応を示す細胞はわずかである。しかし、PAFには持続的な発火反応を示す神経細胞の割合ははるかに高い。更にPAF神経細胞の発火頻度は音刺激の時間変化に伴って多様な時間変化パッタンを示す。だから、PAF神経細胞の発火パッタンの異同によって違う音刺激を区別できる可能になる。neurometric analysis の結果もPAF神経活動はAAFの神経活動より音刺激の弁別能力が高いことを証明した。我々の結果はPAFがAAFより音声情報処理の脳階層構造のより高級なレベルにあることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去一年間にはわれわれは計画どおりに一次聴覚野以外の高次聴覚野へ研究範囲を拡大した。それによって、今まで詳しく調べられなかったAAFとPAF神経細胞の音反応特徴を解明した。さらに,音声処理の情報流れはAAF->A1->PAFの順に進むことを示唆する証拠を見つけた。これらの重要発見を既に一枚の論文にまとめてPLoS.Oneに出版されました(PLoS One. 2013;8(1):e52942. Jan 2.)。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には我々はほかの高次聴覚野へ研究を広げる。AAF、A1、PAFには神経細胞の最適な反応周波数(best frequency, BF)はある空間的な順位に従って配列する。いわゆるtonotopic mapがある。だから、この三領域はまだ聴覚野の中心区(core area)と呼ばれる。その周りにある二次聴覚野(A2)側頭野(T)などにはtonotopic mapがなくなり、聴覚野の周辺区(peripheral area)と呼ばれる。聴覚野周辺区の細胞は音刺激に対する反応の特徴はまだ研究されなかった。解剖の研究結果によってこれらの領域は扁桃体、前頭前野などの大脳辺縁系からの入力もたくさん受ける。だから、神経細胞の反応は動物の情動状況によって大きく影響を受ける可能性が高い。これらの原因で、今後はA2とTなどの大脳聴覚野の周辺区に電極を埋め込んで、音声弁別行動中に神経活動を記録する。更に、動物は受動的に同じ音刺激を聞く時の神経活動も記録し、行動覚醒状態による各領野神経活動への影響を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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