研究概要 |
平成25年度には我々は自由行動のネコを用いて、音声弁別タスクを実行中に聴覚皮質の各領野の神経細胞の反応活動を精査した。ネコの聴覚皮質のprimary auditory cortex (A1)、secondary auditory cortex (A2), insular (In)と temporal cortex (Te)など数個の領野と、各聴覚領野間の違いを発見した。ネコは音声弁別タスクを実行する時には、200Hzのclick音が聞くとGo反応を示し、舌を出して餌提供装置を舐める。一方12.5Hzのclick音を聞くとNo-go反応を示し、舌を出さない。同時に聴覚皮質の神経細胞の反応活動を記録した。音声弁別タスクと同じ音刺激を受動的に聞く時の神経活動を比べると、A1には能動的状態の反応は受動的状態の反応より低い細胞が多く見つかったが、A2,T,INなどより高次な聴覚野においては能動的反応のほうが強い細胞の割合が増えた。従って、より高次な聴覚野は注意により神経活動が増強されることが分かった。我々の結果は2013年7月にJ Neurosci誌に掲載された(Dong&Qin et al. J Neurosci. 2013)。 大脳聴覚野機能研究は従来、麻酔下或いは拘束動物で行うが、本研究から我々は自由行動ネコを使い始めた。Go/NoGo課題によりネコに断続音と連続音の弁別行動をするよう訓練した。ネコの大脳一次聴覚野と高次聴覚野に多数の慢性電極を植え込んで、タスク実行中に聴覚野の神経活動電位を記録した。これにより、同一の個体において動物の音弁別能力と神経活動の関係を分析し、断続音と連続音の判断に関する神経反応パターンを同定した。更にネコが能動的に音声信号を弁別する時と受動的に音声を聞く時に各脳領域の神経活動電位を比べ、聴覚注意状態における各領域の神経活動への影響を明らかにした。
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