平成24年度は、①免疫組織化学染色に適用可能な軸索ガイダンス分子・ネトリン1に対する特異的な抗体の作製、②交連軸索の腹側伸長時におけるネトリン1タンパクの発現分布を免疫組織化学染色により明らかにすること、③交連軸索の腹側伸長に必要十分なネトリン1の発現分布の解明に必要となる研究資料の作製並びにその解析を行うこと、を目的として研究を推進した。 得られた成果は以下の通りである。①免疫組織化学染色に適用可能な抗ネトリン1抗体の作製に成功した。②交連軸索の腹側伸長時におけるネトリン1タンパクの発現分布を解明した。③神経管の底板を頂点とした勾配状のネトリン1タンパクの発現分布に必要なタンパク質を同定した。④発生初期から神経管の底板以外の領域でDNA組み換え酵素・Creリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスを導入し、それらマウスとネトリン1コンデイショナルノックアウトマウスとを交配させることにより、発生初期段階から底板以外の神経管の領域でネトリン1が欠損する遺伝子改変マウスを作製した。 また一連の研究により得られた研究資料を用いて、大脳皮質興奮性神経細胞の神経極性形成過程を明らかにし、中脳ドーパミン作動性ニューロンの同側性の軸索投射を維持する分子機構の解明にも成功した。 今後は本研究期間内に得られた研究資料並びにその成果を基にして、軸索ガイダンス分子・ネトリン1が果たして本当に化学走性説に従い交連軸索を腹側へと誘導しているのかを検証し、交連軸索の腹側伸長を規定しているネトリン1の真の作用機序を明らかにしていくことを予定している。
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