研究課題/領域番号 |
23700385
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
匹田 貴夫 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00437005)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 発生・発達 / 再生神経科学 / プロテオミクス / 細胞間接着 / 神経細胞移動 |
研究概要 |
齧歯類では海馬歯状回および脳室下帯に神経幹細胞が存在し、恒常的にニューロンが産生されている。脳室下帯において新生したニューロンは嗅球に至る100μmという長距離を8μm/hという高速で移動したのち成熟する。移動中の新生ニューロンは、お互いを足場とした鎖状移動とよばれる特異な移動様式を示す。しかしながら、新生ニューロンがどのような接着構造により同種および異種細胞を移動の足場としているかは不明である。本研究の目的は、新生ニューロンが移動の際に形成する細胞間接着構造を分子レベルで明らかにする事である。平成23年度において申請者は、実施計画に基づき以下の研究を推進した。1、新生ニューロンの膜タンパクプロテオーム新生ニューロンを豊富に含むRMSをマウス脳より調製し、膜タンパク画分に含まれるタンパク質を高感度LC/MS/MSを用いたショットガンプロテオミクスによる網羅的同定を試みた。本実験においては、膜タンパク質の質量分析に適した条件での調製方法と、高感度な質量分析装置が必要となる。本研究では、慶應義塾大学 石濱泰教授らが開発した相間移動溶解法を用い効率的に膜タンパク質を可溶化した。また、名古屋大学大学院医学研究科の神経情報薬理学講座との共同研究により、高感度LC/MS/MSであるThermo Fisher LTQ Orbitrapを用いプロテオーム解析を行った。2、バイオインフォマティクスによる膜蛋白の分類質量分析装置により同定されたタンパク質のスコアをコントロールと比較し、RMSに高く発現しているタンパク質を選別する。コントロールとして海馬より抽出した膜画分のタンパク質を用いた。同定されたタンパク質郡について、Gene ontologyに基づいた機能的分類、及びスコアによるランク付けを行う事で量的なランキングを行った。以上のように、申請者は当初計画していた通りに研究を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において、平成23年度の研究の目的として1)新生ニューロンの膜タンパクプロテオーム、2)バイオインフォマティクスによる膜蛋白の分類 の2点を設定した。該当年度において申請者は、新生ニューロンのより相間移動溶解法により膜タンパク質を抽出し、高感度質量分析装置であるThermo Fisher LTQ Orbitrapによりペプチドの同定を行い、多数のペプチドを同定した。次に、ペプチドの質量をペプチド質量データベースであるMASCOTにより解析し、サンプル中に含まれるタンパク質を網羅的に同定した。同定されたタンパク質について、Gene ontologyに基づいた分類を行い、新生ニューロンに含まれる膜タンパク質の分類を行った。以上の通り、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、以下の通り研究を推進する予定である。・接着構造の解析本研究は生体内より単離した組織をスタートマテリアルとして用いるため、ニューロン以外の組織を含む。したがって、質量分析により同定されたタンパク質が新生ニューロンに発現しているかどうかを確認する必要がある。プロテオーム解析により同定されたタンパク質のうち、接着分子として機能が知られている既知の分子について免疫染色を行い、新生ニューロンにおける局在を観察する。次に、新生ニューロンにおいて染色が確認された分子については、電子顕微鏡による詳細な解析を行う。また、申請者らはマウス脳より新生ニューロンおよびアストロサイトを単離し、ディッシュ内で単体および共培養する系を確立している(Kaneko et al., Neuron, 2010)。この系を用いて新生ニューロン間および新生ニューロンとアストロサイトの接着構造を詳細に解析する・接着分子の発現抑制による表現型の解析新生ニューロン、アストロサイトおよび血管との接着構造に存在が確認できた分子について、RNAiによる発現抑制を行い、in vivoにおける表現型を解析する。脳室下帯から嗅球への新生ニューロンの移動距離を測定し、新生ニューロンの移動における機能を評価する。また、新生ニューロン間、またはアストロサイト、血管との距離を計測する事で移動におけるアストロサイトおよび血管と接着構造の関連を解析する。さらに、申請者らは、新生ニューロン、アストロサイトおよび血管において蛍光タンパク質を発現するマウスを所有している。これらのマウスの脳を顕微鏡下においてスライス培養しライブイメージングを行うことで、標的遺伝子の細胞間相互作用における機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、新生ニューロン、アストロサイト、血管関連細胞の染色、イメージングの実験が中心となる。従って、実験動物および培養試薬、抗体の購入等に研究費を使用する予定である。また、細胞培養に使用する培養器具、プラスチック製品、およびガラス機器も購入する必要があるため、研究費を使用する予定である。
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