研究課題/領域番号 |
23700387
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井端 啓二 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (30462659)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イメージング |
研究概要 |
小脳LTDは、小脳顆粒細胞―プルキンエ細胞間で起こり、運動学習、運動制御に重要な役割を果たしている。小脳LTDにおけるシナプス結合の活性の変化をより詳細に解析するために、小脳顆粒細胞のプレシナプス活性の可視化が重要であると考えている。そこで、本研究では、神経細胞の神経伝達物質放出の様子を、効率良くイメージングするためのシナプス小胞融合モニタータンパク質の開発を行い、このモニタータンパク質を小脳顆粒細胞で発現させ、顆粒細胞から伸びた軸索上の個々のプレシナプス活性を可視化し解析する事を目的とする。平成23年度はプレシナプスの活性をモニターするための分子の開発、改良を試みた。これまでに幾つかのプレシナプス活性モニタータンパク質が報告されているが、多くは小脳顆粒細胞において機能する事が確認出来た。次に、これらのモニタータンパク質にアミノ酸置換による変異を加えて、より強度を高くした変異体を作製した。その結果、数倍明るい変異体が作製出来た。変異体の作製は株化された細胞で行われたので、これらの変異型のモニタータンパク質が神経細胞において機能するかを検討した。これらの変異型のモニタータンパク質を小脳顆粒細胞にトランスフェクションし電気刺激によって神経細胞を脱分極させると、これらの変異型のモニタータンパク質が反応する事が確認された。一方、TTX存在下、及び細胞外カルシウム濃度が低い場合においては反応しない事が確認された。これらの事より、これらの変異型のモニタータンパク質は神経細胞のプレシナプス活性を可視化するのに適していると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の課題は、プレシナプス活性を測定するモニタータンパク質の最適化であり、特に2種類のルシフェラーゼを用いて、プレシナプスの挙動をイメージング可能にする2つの発光型モニタータンパク質の開発、最適化であるが、(A)細胞膜を通過しないルシフェラーゼ基質を用いたモニタータンパク質、(B) pH依存性を持つルシフェラーゼを用いたモニタータンパク質のうち、(A)はライブイメージングを行うためには強度が弱く、大きく改良が必要である事が判明したが、pH依存性を持つルシフェラーゼを用いたモニタータンパク質の際には、強度が高くライブイメージングを行う事が可能であった。さらに改良した変異型のモニタータンパク質は強度が数倍高く、時間分解能が向上した。このようにおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策、平成24年度は主に次の2つの事項について研究を進めて行く予定である。(A)プレシナプス活性のモニタータンパク質を小脳スライスに導入後、活動電位依存的な、且つ、自発的な活動をイメージングする。小脳顆粒細胞にプレシナプス活性をモニターするタンパク質を発現させ、上行線維、平行線維に存在するプレシナプスの活性を測定する。 1個の顆粒細胞由来の軸索上のプレシナプスは、活動電位発生後、全て活動するので、上行線維と平行線維のそれぞれのプレシナプスの活性を同時にモニターする。(B)活動電位非依存的な、且つ、自発的な活動(自発性単一小胞融合)をイメージングする。イメージング用緩衝液にTTXを添加し、活動電位の発生を阻害させ、自発性の単一小胞融合だけをモニターする。 ここでは、それぞれのプレシナプスにおける単一小胞融合頻度を計測し、平行線維での自発性単一小胞融合の頻度と上行線維での頻度を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は主に分散培養細胞およびスライスカルチャーを用いた実験を行う予定であるため、細胞培養用の消耗品の購入に研究費の大部分を充てる。また平成23年度に予定していた学会参加は行われなかったので平成24年度に行う予定である。
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