研究課題/領域番号 |
23700393
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
鳴島 円 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30596177)
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キーワード | シナプス除去 / 発達 / 視床 / 大脳皮質 / 体性感覚系 / mGluR1 / 外側膝状体 / 視覚系 |
研究概要 |
24年度は、前年度に開発した浸透圧ポンプによる視床mGluR1の薬理学的操作、およびEVA樹脂を用いた大脳皮質の神経活動阻害を引き続いて行った。 前年度までに、mGluR1の薬理学的手法による阻害が発達後期(生後28日以降)に網膜―外側膝状体シナプスの再多重化を引き起こすことを発見した。この現象は近年報告された感覚経験依存的な末梢―視床シナプスの再多重化(Hooks & Chen, 2006)と共通するため、本年度はmGluR1の活性化が感覚経験依存的な再多重化に与える影響を検証した。その結果、生後21日齢からの感覚遮蔽時にmGluR1賦活薬DHPGを投与すると、網膜―外側膝状体シナプスの再多重化が阻止され、成熟型のシナプス結合パタンが維持された。以上から、mGluR1が感覚経験依存的に成熟型のシナプス結合パタンを維持する機構が存在し、感覚遮蔽時にはmGluR1の活性の低下がシナプス結合の再多重化を引き起こすことが示唆された。 また、EVA樹脂を用いた実験は、手術方法の改善を行い、大脳皮質に生後21日齢でGABA受容体の賦活薬ムシモール投与群と生理食塩水投与群における内側毛帯線維―視床VPmシナプスの結合パタンを比較したところ、ムシモール投与群で有意に投射線維の増加が見られた。以上から、大脳皮質の神経活動が内側毛帯線維―VPmシナプスの結合パタン維持に影響を与えると考えられる。 一方で、前年度までの経過から、手術による侵襲が大脳皮質の神経活動に影響を与える可能性が示唆されたため、より侵襲の低い神経活動の操作法として、オプトジェネティクスを用いた神経活動の操作法の確立を目指している。現在、大脳皮質6層特異的Cre発現マウスの発達期におけるCre発現パタンの確認が終了し、flox-Archマウスとの交配により、大脳皮質6層特異的に神経活動抑制が可能なマウスを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画では、体性感覚系の神経回路を対象に内側毛帯線維―視床のシナプス刈り込みに大脳皮質の神経活動が果たす役割を解析する予定であったが、視覚系神経回路の網膜―外側膝状体シナプスでmGluR1の作用に関する知見が多く得られたため、網膜―外側膝状体シナプスでの解析を主に行った。この成果は現在投稿準備中である。体性感覚系のシナプス刈り込みに関しては、薬理学的解析を主に進め、オプトジェネティクスを用いた解析については実験動物の納入・繁殖に時間がかかったが、現在Creマウスの有効性が蛍光たんぱく発現により確認され、生理学的解析に用いる準備は整った。また、当初の計画にあるKirおよびsiRNAを用いた実験については、Kirに絞って発現のためのウィルスの作成を行っている。達成度は「概ね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
オプトジェネティクスおよびKir発現により、大脳皮質の神経活動を阻害した場合の内側毛帯線維―VPmシナプスの結合パタンの解析を進める。オプトジェネティクスに用いるCreマウスおよびfloxマウスは現在交配中であり、近日中に電気生理学的な解析を開始する予定である。Kirを用いた実験についても、ウィルスが完成次第解析を開始する。また、大脳皮質の神経活動阻害を確認するために、in vivoでの大脳皮質細胞外記録を行って、各操作の有効性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究費は、主に解析用のソフトウェア、および試薬、ディスポ製品等の消耗品の購入に使用する。
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