研究課題/領域番号 |
23700404
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
惣谷 和広 独立行政法人理化学研究所, 大脳皮質回路可塑性研究チーム, 研究員 (80415207)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 二光子励起 / GFP / カルシウムイメージング / 大脳皮質視覚野 / GABAニューロン / in vivo / 方位選択性 / 眼優位可塑性 |
研究概要 |
近年、覚醒時の大脳皮質神経回路網の機能に抑制性ニューロンが大きな役割を果たしていることが示唆されている。しかしながら、実験方法の困難さから、今までの覚醒大脳皮質神経回路網の解析は電極を用いたブラインド法によって行われてきたので、覚醒状態による大脳皮質神経回路網内の多数のニューロン活動を同時に計測し、大規模に会席されては来なかった。 本研究は、in vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法を覚醒下のげっ歯類大脳視覚野の脳機能イメージングに適用し、覚醒下の大脳皮質で興奮性と抑制性ニューロンに分けてイメージングすることによって、覚醒下の脳活動における抑制性ニューロンの活動解析を目指すものである。 そこで、まず、今年度は、去年度までに開発した、抑制性ニューロンにだけ黄色蛍光たんぱく質を発現する遺伝子改変ラット:VGAT-Venusラットを用いたin vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法を覚醒下のラット大脳視覚野の脳機能イメージングに適用するための実験系を用いて覚醒状態における視覚反応の研究を行った。 また、脳の覚醒状態をコントロールすると考えられている脳幹網様体マイネルト基底核の神経細胞はアセチルコリンを神経伝達物質として放出し、大脳皮質神経回路網の覚醒状態に関与しているという知見から、大脳皮質視覚野でのこの作用を解明するため、麻酔下のマウスの大脳皮質神経細胞の活動をin vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法で計測している時に脳幹網様体マイネルト基底核を電気刺激できる系を立ち上げ中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
覚醒遺伝子改変ラットを用いたin vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法は画像の揺れが激しいため、解析方法や計測するまでのラットの訓練など計測に向けた準備に要する時間が大きいのが現状である。 よって、覚醒脳の機能を模倣するシステムを構築する必要性が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
脳の覚醒にアセチルコリン覚醒脳の機能を模倣するシステムとして、脳幹網様体マイネルト基底核の神経細胞を電気刺激するシステムは、脳波を変化させることから人工的に脳の覚醒状態を改変することが可能なシステムである。 今後はこのシステムとin vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法を組み合わせて、脳の覚醒状態が変化した場合、大脳皮質視覚野の神経回路網内の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの活動変化を解析して行く予定である。 また、この解析結果と実際の覚醒脳でのin vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法による大脳皮質視覚野神経回路網内の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの活動を比較し、統合的に解析して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は麻酔下のマウスを模倣的に覚醒状態を人工的に改変させるため、脳幹網様体マイネルト基底核の神経細胞を電気刺激するシステムをセットアップする。マイネルト基底核を刺激すると大脳皮質の脳波が一過的にslow waveが消失することから脳波を指標に刺激電極の位置を決める。この刺激システムを確立後、in vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法を組み合わせて、脳の覚醒状態が変化した場合、大脳皮質視覚野の神経回路網内の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの活動変化を解析して行く予定である。 また、脳幹網様体マイネルト基底核の神経細胞を電気刺激するシステムは、問題としては、電気刺激によって、マイネルト基底核以外を刺激してしまってる可能性がある。そこで、脳幹網様体マイネルト基底核のアセチルコリン陽性ニューロン特異的にチャネルロドプシンを発現するトランスジェニックマウスの購入を計画している。このマウスを用いれば、青色光刺激によって、アセチルコリン陽性ニューロンだけを刺激することが可能となるので、電気刺激法に加え、この方法も確立させ、in vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法を組み合わせることで脳の覚醒状態が変化した場合、大脳皮質視覚野の神経回路網内の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの活動変化を解析して行く予定である。 さらに今まで本研究代表者はin vivo二光子励起機能的カルシウムイメージング法にカルシウム蛍光指示薬を用いてきたが、現在、カルシウム蛍光タンパク質GCaMPをマウス大脳皮質のニューロンに発現させ、長期的にニューロンの活動を計測するシステムも立ち上げ中である。
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