研究課題/領域番号 |
23700408
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) |
研究代表者 |
木村 有希子 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別協力研究員 (70581122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 神経科学 |
研究概要 |
脊髄運動系神経回路の機能メカニズムの解明のために、従来、特定の種類の脊髄神経細胞群の個々のニューロンの性質が調べられ、運動系回路における役割を推定されてきた。しかし、直接その役割を検証することはできていなかった。そこで、本研究ではゼブラフィッシュに光遺伝学を用いて、特定の種類の神経細胞の集団としての活動を直接制御することで、予想されるロコモーションの制御が実際に起こることを直接的に示す。その結果により、特定の種類の脊髄神経細胞の個々のニューロンが機能的回路において果たす役割と、集団として実際にロコモーションで果たす役割を統合し、脊髄運動系神経回路の機能メカニズムを明らかにすることを目的としている。23年度は特定のニューロンに光遺伝学のツールを発現させたトランスジェニック魚の作成、及びその魚を用いて転写因子Chx10を脊髄で発現するニューロンの解析を行う計画であった。光遺伝学のツールを発現させたトランスジェニック魚の作成に際して、特定の転写因子の制御配列に直接光遺伝学のツールを制御させる従来の方法では、行動を解析したい発生段階において、光遺伝学のツール分子の十分な発現量が達成できなかったため、Gal4-UAS系を用いた発現系を使用することにした。ゼブラフィッシュにおけるGal4-UAS系は発現がモザイクである、次世代で発現が弱まるなどの問題点はあるが、解析に使用可能なトランスジェニックフィッシュを作出することに成功した。ただし、この系では用いる転写因子の制御配列によって、非特異発現が増える場合があり、脊髄でのChx10ニューロンの解析は脊髄前方に限られることが分かった。翌年度にChx10ニューロンの本格的な解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光遺伝学のツールを発現させたトランスジェニック魚の作成において予想外のトラブルがあったため、時間がかかった。トラブルの克服には概ね目途が付いているので、翌年度の計画遂行には問題ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
I、脊髄Chx10ニューロン集団のロコモーションにおける役割の解析光遺伝学のツールをChx10ニューロンに発現させたトランスジェニック魚を用いて、脊髄に任意の光照射を行い、脊髄Chx10ニューロン集団の活動を制御する。その結果生じる行動変化を観察し、脊髄Chx10ニューロンがCPGの主要な要素であるとの仮説を直接的に証明する。II、脊髄Sim1ニューロンの解析(i)、脊髄Sim1ニューロン集団のロコモーションにおける役割の解析。Sim1を発現する脊髄の興奮性介在ニューロンは自発的な遊泳行動の維持に働くと推測している。この仮説を検証するために Chx10ニューロンと同様な解析を行う。光遺伝学のツールをSim1ニューロンに発現させたトランスジェニック魚を用いて、脊髄に任意の光照射を行い、脊髄Sim1ニューロン集団の活動を制御する。その結果生じる行動変化を観察する。(ii) ChR2を用いたSim1ニューロンシナプス結合様式の解析。Sim1ニューロンのシナプス結合ターゲットは未解明な為、光遺伝学と電気生理学的な解析を組合せて調べる。シナプス前細胞にChR2 を発現させることにより、電極を使用せずに、光刺激によってシナプス前細胞にスパイクを誘発する。この方法により、シナプス後細胞のみの電気生理学的記録によって、2神経細胞間におけるシナプス結合様式を迅速かつ容易に解析することが可能となる。この解析をSim1ニューロンで行い、Sim1ニューロンの結合ターゲットを網羅的に明らかにする。(i)(ii)を合わせて脊髄Sim1ニューロンのロコモーションにおける役割がどのような神経回路によって果たされるかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度はトランスジェニック魚作出の計画の遅れによって、特定のニューロン解析を行うことができなかったため、翌年度に研究費を残している。翌年度に請求する研究費と合わせて、上述の研究を遂行する。
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