研究課題/領域番号 |
23700413
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉本 恵梨子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60467470)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 神経回路網 / 視床-大脳皮質投射 |
研究概要 |
本研究は、1個の視床ニューロンの軸索から大脳皮質の「ある機能グループ」に属するニューロン群の樹状突起へのシナプス結合特性を網羅的、形態学的に解析し、その構造的特徴を読み解き、機能を推測することを目的として行っている。まず、「ある機能グループ」を、パルブアルブミン陽性のfast spiking インターニューロン(PVニューロン)と設定した。そのため、PVニューロンの樹状突起をすべて可視化する必要があるが、これは当研究室で開発されたトランスジェニック動物、"PVマウス" を利用することで達成できる。このPVマウスは、PVニューロンの樹状突起と細胞体が特異的に、完全にGFPにより標識されているので、抗GFP抗体により免疫染色を行う事で、PVニューロンの樹状突起と細胞体が容易に、しかも特異的に可視化できる。次に、単一の視床ニューロンを軸索末端まで完全に可視化することが必要だが、これには遺伝子改変シンドビスウイルスを用いて実験を行っている。この遺伝子改変シンドビスウイルスは、感染した細胞に膜移行性シグナル付きの赤色蛍光タンパク(RFP)を強制発現させるため、感染細胞は軸索末端まで完全にRFPにより標識される。ウイルス液を適切に希釈し、マウス視床に注入する事で、単一の視床ニューロンを完全に可視化する。現在は、PVマウスに様々な濃度に希釈したウイルス液を注入し、単一ニューロン標識に最適なウイルス液の濃度、液量を決定しているところである。また、GFP標識されたPVニューロンの樹状突起、およびRFP標識された視床ニューロンの軸索を抗GFP抗体と抗RFP抗体をもちいて、明視野二重染色するプロトコールも完成しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PVニューロンの樹状突起の可視化に関しては、すでにトランスジェニックマウスが開発済みなので、達成できている。後は、単一のマウス視床ニューロンの軸索の可視化であるが、遺伝子改変シンドビスウイルスを用いることで、達成できる。実際に、ウイルス液をマウスに注入し、視床のニューロンが感染する事は確認済みである。現在は単一の視床ニューロンに感染させるために最適なウイルス液の濃度、注入液量を決定するための予備実験を実施しているところで、もうすぐプロトコールが完成する。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、シンドビスウイルスの注入の最適条件を決定する。最適なウイルス液の濃度、注入液量が決定し、また染色のプロトコールが決定すれば、あとは実験の回数を重ねていき、必要なサンプル数を集める予定である。また、サンプルが得られた暁には、ニューロルシダを用いて、軸索の三次元再構築やアポジション(シナプスを形成している可能性のある部位)の分布の解析など、詳細な形態解析を行う予定である。もし、最適条件でも、単一の視床ニューロンの標識が効率よく行えず、サンプルが得られない場合はjuxtacellular recording など、他の単ーニューロン標識法の使用を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
一般試薬、遺伝子改変シンドビスウイルスベクターの作製に必要な試薬類の購入、免疫染色に必要な抗体などの購入に使用する。また、トランスジェニックマウスの維持に必要な経費の支払いも行う。得られた成果を学会や論文で発表するのに必要な経費にも使用する。
|