研究課題/領域番号 |
23700415
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
服部 剛志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50457024)
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キーワード | オリゴデンドロサイト / 精神疾患 / 発達障害 / 遺伝子 |
研究概要 |
ラットのオリゴデンドロサイト培養系を用いて精神疾患脆弱因子DISC1(Disrupted In Schizophrenia 1)がオリゴデンドロサイトの発達に影響を与えるかどうか検討を行った。DISC1の発現を抑制したオリゴデンドロサイトではCNPやMBPといった、ミエリン関連タンパクの発現量が優位に上昇しており、細胞の形態も通常のオリゴデンドロサイトよりも複雑な形に変化しており、オリゴデンドロサイトの分化が促進されていることが分かった。DISC1の強制発現、また、DISC1のmutant formでもオリゴデンドロサイトの分化は変化しており、これらの結果よりDISC1がオリゴデンドロサイトの分化に関与しているという事実が明らかになった。さらに、DISC1の発現を抑制した細胞ではオリゴデンドロサイトの分化を制御する転写因子SOX10やNKX2.2の発現が上昇しており、DISC1がこれらの転写因子の発現を制御することによりオリゴデンドロサイトの分化を制御せいていることが明らかになった。これらの研究結果より統合失調症や双極性障害といった精神障害においてオリゴデンドロサイトの発達異常が発症に関与している可能性を示唆した。現在の精神疾患の発症メカニズムについては神経の発達障害の観点から研究がおこなわれているが、神経細胞以外の細胞の発達異常も関与していることが分かったため、今後の新たな診断・治療に将来的に役立つ可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オリゴデンドロサイトの培養系におけるDISC1遺伝子の機能解析は終了し、DISC1がオリゴデンドロサイトの分化に関与していること、およびそのメカニズムについて明らかにしたが、マウスを使用した解析、すなわち、DISC1遺伝子変異マウスにおけるオリゴデンドロサイトの発達に関する解析については、もう少し検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
DISC1遺伝子変異マウスを使用して、オリゴデンドロサイトの発達に異常があるか否かを明らかにする。方法は発達段階および成獣のDISC1遺伝子変異マウスの脳におけるミエリン関連因子の発現解析、形態学的解析によるオリゴデンドロサイトの発達の検討を行う。 DISC1遺伝子変異マウス作製のために交配を行っていたが、当初の予想より仔マウスの誕生数が少なく、予定年度内に解析に必要なマウス数がそろわなかったため、解析を終了することができなかった。次年度よりはかけ合わせのマウス数を増やす等の工夫を行い、マウスの解析を引き続き行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
DISC1遺伝子変異マウスの解析にかかる費用(分子生物学試薬類、マウス飼育費)として847,150円、学会発表費として120,000円を使用予定である。
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