研究課題
本研究課題では、中枢神経系の興奮性シナプス後部に豊富に局在し、精神遅滞(知的障害)の原因遺伝子の一つであるIQ-ArfGEFに着目した。IQ-ArfGEFはエンドサイトーシスなど膜小胞輸送を制御するArf6を活性化する因子であるが、シナプス後部におけるIQ-ArfGEFの機能的意義は明らかにされていない。そこで、IQ-ArfGEF遺伝子欠損マウスを作製し、その表現型を解析することによって興奮性シナプス後部に局在するIQ-ArfGEFの機能的役割を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、Cre-loxPシステムを用いたIQ-ArfGEF遺伝子欠損マウスの作製を行った。IQ-ArfGEFがloxP配列で挟まれたノックインマウスを作り、Nestin-Creマウスと交配させてIQ-ArfGEF遺伝子が欠損するマウスを作製した。このマウスにおいて抗IQ-ArfGEF特異抗体を用いた免疫染色およびイムノブロットによって脳でのIQ-ArfGEF欠損が確認された。このIQ-ArfGEF遺伝子欠損マウスを用いて、中枢神経系におけるIQ-ArfGEF欠損に伴う各種興奮性シナプス分子の発現量の変化を免疫組織染色およびイムノブロットでスクリーニングした。さらに、発現変化が確認された分子について定量的解析を行った。また、IQ-ArfGEFの結合分子であるPSD-95の発現パターンの解析を行い、興奮性シナプスの形成異常の有無を確認した。本研究課題の研究期間内においてIQ-ArfGEF欠損マウスの作製とIQ-ArfGEF欠損に伴う各種興奮性シナプス分子のスクリーニングまで達成することができたが、IQ-ArfGEFの機能的役割と高次脳機能への関与の分子メカニズムの解明は途中段階である。今後、IQ-ArfGEFが関与する脳機能や精神遅滞の作用機序を明らかにするために、さらなる解析が必要である。
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