研究課題
本研究では、リーリンが最終的に制御する分子を同定し、リーリンの生体における機能とその分子機構の全体像を明らかにすることを目的としている。哺乳類の脳には、神経細胞が整然と配置する層構造が存在する。この層構造が逆転した変異マウス、リーラーは50年以上前に発見され、その原因遺伝子・分子リーリンは発見から10年以上が経過した。それにもかかわらず、このリーリン分子が発生中の神経細胞に対してどのような役割を持っているのか、その機能は依然として謎に包まれている。平成24年度は、とくに発生中大脳皮質の最表層において、移動神経細胞における様々な分子の機能を子宮内電気穿孔法を用いて解析した結果、リーリンシグナルの下流でDab1-Crk/CrkL-C3G-Rap1-インテグリンα5β1というシグナル伝達経路が活性されて、細胞配置の制御が行われている事を明らかにした(Sekine et al., Neuron, 2012)。この結果、リーリンが移動神経細胞のインテグリンα5β1という接着分子を正しいタイミングで活性化することで、移動の最終段階を制御することが明らかになった。現在、さらに、インテグリン、さらにはNカドヘリンを含めた、細胞間の接着に関わる分子に注目して、それらの分子がリーリンによってどのように別々に制御されているのかを明らかにしようと考え、そのメカニズムの解明を行っている。また、Nカドヘリン以外の分子についても、その詳細な局在や発現部位等の観察により、リーリンによる制御を受ける可能性のある分子の検索を開始している。現在、いくつかの候補となる分子については、子宮内電気穿孔法とRNAiを用いたノックダウンを行い、神経細胞移動および、層構造形成に与える影響を検討している。
2: おおむね順調に進展している
リーリンが最終的に制御する分子を同定し、リーリンの生体における機能とその分子機構の全体像を明らかにすることを目的としているが、リーリンシグナルの下流でDab1-Crk/CrkL-C3G-Rap1-インテグリンα5β1というシグナル伝達経路が活性されて、細胞配置の制御が行われている事を明らかにした。そのほかの、リーリンが制御する可能性のある分子についても、現在リーリンによりどのような制御を受けるのかについて検証を進めている。そのため、おおむね研究計画通りに進展していると考えられる。
今後、リーリンがどのようにインテグリンとNカドヘリンそれぞれの活性を制御しているのか検証を行う。また、インテグリンとNカドヘリン以外の分子についても、その詳細な局在や発現部位等の観察により、リーリンによる制御を受ける可能性のある分子の検索を開始している。このため、引き続き、候補となる分子について、子宮内胎児電気穿孔法とRNAiを用いたノックダウンを行い、神経細胞移動および、層構造形成に与える影響を明らかにしていく。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。交付された研究経費は主として消耗品に用いる。なかでも、マウスを用いて手術を行う子宮内マウス胎児電気穿孔法を用いて解析を行うことが多いため、実験動物費に多くの研究経費が必要となる。妊娠マウスが一腹2200円であるが、おおよそ週に5腹、月に21腹程度、年間250腹程度の使用が見込まれる。このため実験動物費はH25年度は550千円程度となる。その他分子生物学的実験に用いる薬品、ガラス器具代が必要となり、それらに使用することを計画している。実験用のマウスは申請者の研究室内の3つの飼育室において維持管理されているため、その世話をする実験補助者が必要である。成果発表のため、学会参加費、外国語論文の校閲費、論文投稿料等の使用を予定している。
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Genes to Cells
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1111/gtc.12045.
Neuron
巻: 76 (2) ページ: 353-369
doi: 10.1016/j.neuron.2012.07.020.