本研究において、仔を攻撃する交尾未経験の雄マウスでは、仔が発するフェロモンによって鋤鼻神経回路が活性化され、攻撃行動が誘発されているのに対し、仔を養育する父マウスでは、フェロモンを感知する入り口の鋤鼻器で既にその情報伝達が抑制されていることがわかった。さらに、交尾未経験の雄マウスの鋤鼻器を切除して仔のフェロモン情報の感知を遮断すると、仔への攻撃行動が抑制されるとともに、父性行動が発現することが明らかとなった。以上の結果から、雄マウスの攻撃から養育への行動変化には、鋤鼻器における仔のフェロモン情報の伝達抑制が重要であることが示唆された。
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