研究概要 |
重症筋無力症 (Myasthenia Gravis: MG) はneuromuscular junction (NMJ) への自己抗体に起因する自己免疫疾患である。その約15%は抗MuSK抗体陽性のMuSK-MGであるが、その発症機構は不明である。MuSKはNMJの筋肉側に存在する膜貫通タンパクであり、細胞外領域に4つのimmunoglobulin-like-domain (Ig1, Ig2, Ig3, Ig4) と1つのC6 boxをもつ。本年度はMuSK抗体の機能をさらに詳しく解析するため (i) 5名のMuSK抗体のMuSK-LRP4結合への影響を解析し、(ii) MuSK抗体のMuSKエピトープ解析を行った。 (i) MuSK抗体のMuSK-LRP4結合への影響をin vitro plate binding assayにて解析した。その結果、5名の患者のMuSK抗体は量依存的にMuSK-LRP4結合を阻害した。つまりMuSK抗体はMuSK-ColQ結合を阻害するのみならずMuSK-LRP4結合も阻害することが証明された。 (ii) hMuSKect-mycから各Igを欠失させた4つのコンストラクト (⊿Ig1, ⊿Ig2, ⊿Ig3, ⊿Ig4 ) を作成し、それぞれタンパクを精製した。MuSK抗体の各欠失hMuSKectへの結合能をin vitro plate binding assayにより定量した。その結果、3名のMuSK抗体で⊿Ig1への結合が有意に減少し、5名全てのMuSK抗体で⊿Ig4への結合が有意に減少した。つまり、MuSK抗体はIg1とIg4を認識している。LRP4はMuSKのIg1と結合することが報告されているが、Patients 4, 5の結果より、LRP4はIg4とも結合することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ColQノックアウトマウスの生産が確保できたため、ColQノックアウトマウスを用いた受動免疫モデルでの神経筋接合部各分子の影響、マウス初代培養筋細胞における抗MuSK抗体存在下でのLRP4、MuSK、AChRのシグナル伝達のアッセイを行う予定である。 また、MuSKとColQのinteraction domainを決定するため、MuSKの4つのimmunoglobulin-like-domain (Ig1, Ig2, Ig3, Ig4)にTagを付け、immuno-precipitation法によりColQと結合するdomainを決定する。そのことにより、MuSK MG患者抗体がMuSKとColQもしくはLRP4どちらのinteractionを強く阻害し、MG症状を発症しているのかを解明することができる。
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