研究課題/領域番号 |
23700428
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
浦野 泰臣 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00546674)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 脂質代謝 / 酸化コレステロール / 細胞内輸送 |
研究概要 |
アミロイド前駆体タンパク質(APP)の細胞内輸送における24S-hydroxycholesterol(24S-OHC)の影響について、免疫沈降法と質量分析法を組み合わせて24S-OHC存在下でAPPへの結合が増加するタンパク質の同定を試みた。その結果、LC-MALDI-TOF-MS法により複数のタンパク質が同定され、中でも小胞体シャペロンであるGlucose-regulated protein 78 (GRP78)に着目し以後の解析を行った。異なる種類のAPPに対する抗体を用いた免疫沈降法からGRP78はAPPに直接結合し、24S-OHC処理により結合が増加することが確認された。またGRP78の発現量が24S-OHC存在下の細胞において増加することがreal-time PCR法やウエスタンブロット法により明らかとなった。これらの現象はAPPが定常的に高発現するCHO細胞に加え、神経細胞株であるSH-SY5Y細胞においても確認された。以上の結果から24S-OHC処理は細胞内でGRP78の発現を誘導し、増加したGRP78が小胞体でAPPと結合する可能性が示唆された。また目的IIについて、APPの予想ステロール結合部位と推定されるVGSNK配列のうち、ヒト野生型APPを鋳型としてpoint-mutagenesis法によりバリン、セリン、リジンをそれぞれアラニンに置換した変異体を作製した。リポフェクション法により野生型CHO細胞に遺伝子導入し、ネオマイシン耐性遺伝子を利用した選別法により、各変異体を安定的に発現する細胞株を樹立した。ウエスタンブロット法を用いたAPPタンパク質量の確認およびELISA法を用いたAβの定量によりVGSNK配列のうちセリン、リジンが24S-OHCによるAβ産生メカニズムにおいて重要な役割を果たす可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的Iについて、的確な抗体を決定し、共免疫沈降法により回収した共沈タンパク質を質量分析法により解析することが出来た。また酸化コレステロール誘導性APP代謝抑制に関わる候補タンパク質となるGRP78を同定することが出来た。目的IIについては、APPの変異体を作製し、安定的に発現する細胞株を受理することが出来た。またAPPの代謝に関与することが予想される複数のアミノ酸残基を同定することが出来た。また計画以上の発見として過剰な酸化コレステロールは神経細胞にNecroptosisという新規の細胞死形態を引き起こすことが明らかとなった。以上のことから、交付申請書に記した目的における平成23年度の計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
APPとの結合が確認されたGRP78については、siRNA法によるノックダウン等により、酸化ステロールによるAPP代謝抑制への直接的な関与があるかについてさらに検討を行う。APPに対する予想ステロール結合部位の変異体の解析については、各変異体の現細胞株よりも高発現系の細胞株の樹立を検討し、得られた安定株を用いて、in vitro transport assay等によりさらなる解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に引き続き次年度においても培養細胞株を用いた実験を行うため、当初の計画通り細胞培養用試薬の購入を計画している。またsiRNA法や免役沈降法に必要な生化学、分子生物学実験試薬についても購入する。特に抗体の購入費の割合が大きくなることが計画される。加えて産生されたAβの定量に必要なELISA用試薬の購入も予定している。
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