研究課題/領域番号 |
23700429
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柳下 聡介 独立行政法人理化学研究所, アルツハイマー病研究チーム, 研究員 (30585592)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドベータタンパク質 / タウ / シナプス / 生化学 / 神経病理学 |
研究概要 |
アルツハイマー病モデルマウスを用い,脳の中でも特に記憶・学習に重要である海馬を用いた生化学的解析を実施した。採取した海馬から,神経細胞どうしの連絡部位であるシナプスを含む画分を生化学的手法により分離し,本研究で着目しているタウについての解析を行った。ここで用いたアルツハイマー病モデルマウスは,アミロイドベータタンパク質の前駆体であるアミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)を脳内において過剰発現させたものであり,このマウスの脳内にはアミロイドベータタンパク質が年齢依存的に蓄積し,記憶学習障害を呈する。解析の結果,このマウスのシナプス画分に,特定箇所がリン酸化されたタウが貯留するのを認めた。タウの貯留の程度は年齢に依存して増加しており,またアミロイドベータタンパク質の量とも相関する傾向があった。なお,ここで解析しているタウはマウス内在性のものである。そのため,本解析の結果は,APPの過剰発現によって,マウス内在性のタウの状態に変化が起こりうることを示すものであり,生体でその事実を示唆している点が,当該分野において意義深いものである。また,モデルマウスの脳内で何が起きているのかを明らかにする目的で,タウとの関連が示唆されるシナプス関連因子についての,分子生物学的な解析も開始した。現段階では,培養細胞を用いた解析ではあるが,興味深い結果が得られており,いずれは生体を利用した解析を行いたいと考えている。このように,in vitro,in vivoの双方から研究を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進行している。いくつかのモデルマウスの系統を用いて解析を行った結果,アルツハイマー病研究の観点から見ると多くの示唆に富む系統を見出すに至った。アルツハイマー病においては,神経細胞どうしの連絡部位であるシナプスに何かしらの変化が起きているだろうという仮説のもと,シナプスに着目した解析を中心に据えた結果である。また,in vivoの解析のみならず,別観点からのin vitroでの解析を開始したことも,研究の流れを後押しする結果となった。こちらからも新しい事実が分かってきており,アルツハイマー病とシナプス障害との関連を明らかにする一助となることが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度と同様,in vivo,in vitroの双方向から研究を遂行する。特に,最近見出したin vitroでの新しい事実については,アルツハイマー病のみならず,一般的な記憶・学習の研究に応用できる可能性が高いため,可能性を広げながら研究を遂行していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額:70,802円異動に伴い,実験計画の一部をH24年度に実施することにした。そのため,上記額をH24年度に使用する予定である。この使用額も含め,H24年度に関しても,研究費は,実験に必要な消耗品,試薬,実験動物の購入に充てる予定である。また,関連する学会への参加を検討中であり,旅費として一部を使用する予定にしている。
|