研究課題/領域番号 |
23700429
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
柳下 聡介 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (30585592)
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キーワード | アルツハイマー病 / タウ / シナプス / グルタミン酸受容体 / 生化学 / 神経病理学 / モデルマウス |
研究概要 |
前年度においては,アルツハイマー病モデルマウスの脳組織の解析を行う過程で,タウと関連が示唆されるシナプス関連因子を探索し,その中から2種類のタンパク質を解析対象として決定した。二種類のうちの片方は,グルタミン酸受容体の構成因子であり,もう片方は,それと結合することが知られているタンパク質である。本年度においては,両者の結合がどのように制御されているのか,またそれに対してタウがどのように作用しているのかを,培養細胞を用いたin vitro系において解析した。いくつかの一アミノ酸変異体,欠損変異体を用いた検討から,両者の解析に必要な部分を同定した。特に,受容体結合タンパク質側において,これまでに報告のない部分が,両者の結合を大きく制御していることを発見した。今後,この部分について詳しく解析を進める予定である。また,タウの存在下で両者の結合強度が変化することを確認した。これらの結果は,アルツハイマー病の脳において,シナプスのタンパク質の挙動がどのように変化しているのかを考察する上で,非常に重要なデータである。 また,タウの解析をマウス個体レベルで実施するため,タウの脳内のリン酸化レベルを制御できるような新しいモデルマウスの解析を試みた。従来の主流である遺伝子改変マウスを用いた方法とは一線を画すため,野生型マウスに生理的な刺激を加えて,脳内のタウのリン酸化を制御可能な実験系の樹立を試みた。いくつかの検討の結果,ある簡便な方法により,マウスの脳内のタウのリン酸化レベルを亢進させることに成功した(現在,特許申請準備中)。このモデルマウスの作製法は,簡便かつ安価であり,また比較的,生理的な条件下であることから,今後新しいモデルマウスとしてアルツハイマー病の病態解明に役立つことが大きく期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グルタミン酸受容体とその結合因子との結合・乖離メカニズム解析は,当初の予定通り,順調に進んだ。得られた結果に関しては,これまでの予想を覆す部分もあり,そこから派生した解析により,当初の計画よりも進捗したものと評価している。 また,当年度においては,タウのリン酸化に着目した新規モデルマウスの作製を試み,それに成功した。これに関しては,様々な条件検討に時間がかかるものと予想していたが,実際には,想定より大幅に短期間で作製方法の樹立に至った。そのため,これについても当初の計画以上に進展しているとの評価である。
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今後の研究の推進方策 |
グルタミン酸受容体関連の解析については,引き続きin vitroでの検討を行うとともに,マウス組織における解析を行い,in vivoにおける知見を得られるよう推進していく。 新規モデルマウスについても開発を引き続き実施する。個体レベルでの解析を行うとともに,これまでに見出したグルタミン酸受容体関連の解析をこのマウスに置いても実施し,in vitro系で得られた知見と組み合わせることで,アルツハイマー病の病態理解に取り組んでいきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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