研究課題/領域番号 |
23700433
|
研究機関 | (財)東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
鈴掛 雅美 (増田 雅美) (財)東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (20583751)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交流 / 神経変性疾患 / タウ / αシヌクレイン |
研究概要 |
当該年度は弧発性神経変性疾患モデルマウスの作成に注力してきました。アルツハイマー病やパーキンソン病など神経変性疾患患者の多くは遺伝的背景を持たない孤発性であることから、発症メカニズムの解明や新規治療法開発を目指すうえで孤発性発症モデル動物の作成は必須と考えられます。神経変性疾患患者脳では不溶性の異常タンパク質が神経細胞内に蓄積している事から、パーキンソン病で蓄積するαシヌクレインタンパク質を試験管内で線維化させたのち、マウス脳内に導入したモデルマウスについて検討を行いました。具体的には、野生型マウスを用い(1)子宮内胎児電気穿孔法、(2)アダルトマウスへの脳内投与、の2種類の手法での検討を行いました。 子宮内胎児電気穿孔法を用いてαシヌクレインのプラスミドと不溶性の線維を導入したマウス脳では、生後14日齢でαシヌクレインの異常リン酸化を誘導させる事が可能となりました。αシヌクレインの異常リン酸化は正常脳では観察されない疾患特徴的な変化であることから、この変化が生後わずか14日の野生型マウスで再現できた事は非常に画期的なことと考えています。現在、このモデルマウスの加齢による変化について解析を行っています。 アダルトマウス脳内投与法についてはαシヌクレイン線維をマウス脳内に投与し数ヶ月経過後、脳の病理学的評価を行ったところ、リン酸化αシヌクレイン抗体陽性の神経細胞内封入体の出現が認められました。野生型マウスに神経変性疾患特有の病理学的変化が認められた例はなく、孤発性モデルマウスとしての利用が期待できます。このモデルマウスを用いて神経変性疾患の発症メカニズムの解明や治療法開発に応用する事が可能となれば、社会への貢献度も非常に高いと考えられます。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、神経変性疾患患者脳で認められる異常なタンパク質の蓄積に着目し、(1)異常タンパク質蓄積を伴う孤発性神経変性疾患モデルマウスの作成、(2)蓄積阻害化合物のスクリーニング、(3)異常タンパク質蓄積メカニズムの解明、を目指しています。この中で最も重要なテーマは孤発性神経変性疾患モデルマウスの作成です。なぜなら、このモデルが構築できれば(2)や(3)にも応用可能となり、本研究全体が大きく前進すると考えられるからです。 モデルマウスの作成については、上述の「研究実績の概要」に記載した通り、野生型マウスに神経変性疾患に特徴的な変化を再現できつつあります。そのため、現在までの達成度としておおむね順調に進展していると評価しました。
|
今後の研究の推進方策 |
当該研究費により、孤発性神経変性疾患モデルマウス確立に向けた試みが大きく進展しました。今後は、モデルマウスの行動学的解析と、蓄積タンパク質の病理学的、生化学的解析を行う予定です。そこで、病理学的解析については免疫染色用の抗体や試薬等を、生化学的解析についてはイムノブロット用の抗体や検出キット、メンブレン等を購入する予定です。また、次年度は蓄積タンパク質の凝集阻害剤のin vitroスクリーニングを開始する予定です。そのためにはリコンビナントタンパク質作成に必要な大腸菌や培地類、スクリーニングに用いる化合物ライブラリーの購入を予定しています。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試薬代については、孤発性神経変性疾患モデルマウスの作成をめざし、動物購入費と解析に用いる抗体購入を見込んでいます。旅費については次年度以降、本研究の大幅な進展が見込まれるため、学会での成果発表が重要となります。そこで国内、海外学会への渡航費を予定しています。その他の費用としては、学会年会費、参加費、論文の英文校正への使用を予定しています。
|