研究課題
本研究課題では新規の孤発性神経変性疾患マウスモデルの作製に成功した。さらにこのマウスモデルを用い神経変性疾患の進行機序について検討を行った。従来の神経変性疾患モデルマウスの多くは、野生型または家族性の遺伝子変異を導入した原因遺伝子を過剰発現させたトランスジェニックマウスであり、神経変性疾患患者の80%以上が孤発発症である事を考慮すると、最適な疾患モデルとは言い難かった。そこで本研究では野生型マウスを用いた孤発性マウスモデルの確立を目標とした。パーキンソン病やレビー小体型認知症の原因遺伝子であり、孤発性患者脳でも蓄積がみられるαシヌクレインタンパク質に着目し研究を行った。αシヌクレインは通常可溶性のタンパク質であるが、患者脳内では構造変化によりβシート構造に富むアミロイド線維を形成して蓄積している。タンパク質の構造変化が原因となる神経変性疾患としてプリオン病がよく知られている。そこで我々はαシヌクレインがプリオンと類似性をもつと考え、αシヌクレインのアミロイド線維をマウス脳内に接種し蓄積病理を再現できるか検討を行った。その結果、野生型マウス脳内にαシヌクレイン線維を接種すると接種からわずか3ヶ月でαシヌクレインの蓄積病理を誘導させる事ができた。さらにαシヌクレインの蓄積病理の分布は接種部位だけでなく、時間経過に伴って脳全体に広がっていた(Masuda-Suzukake et al, Brain 2013)。本課題最終年度には、このマウスモデルを用いて病理の伝播メカニズムについて解析を行った。αシヌクレイン線維の接種部位を変えると病理の出現部位が変化した。さらに接種後早期の段階では、病理分布は接種部位と神経連絡のある部位に限局していた。この結果からαシヌクレイン病理は初発部位から神経回路を介して広がる事が明らかとなった。
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