近年、生理活性物質硫化水素(H2S)が注目されている。本研究では、認知症におけるH2S の動態を解析し、その治療法開発の基盤構築を目指した。大脳皮質におけるH2Sの貯蔵量を測定した結果、アルツハイマー型変化群(ADC)に異常は認められなかったが、老人斑優位型変化群(PSC)については、貯蔵量が低下している傾向が認められた。H2Sの生産酵素及び代謝酵素を定量したところ、PSCでは代謝酵素の存在量が増加しており、ADCおよびPSCともにH2Sを用いた治療法の開発は原理的に可能であることが示唆された。なお、生産酵素を解析する過程で、新たな生産経路を見出した。
|