研究概要 |
様々な細胞から放出される細胞外ナノ粒子であるエクソソームが、ニューロンからも分泌されることが報告されており、不要分子を処理するための運搬体として働いている可能性が示唆されている。本研究課題では、これまで不明であったエクソソームの脳内処理機構の探索をテーマとした。昨年度(23年度)の培養細胞を用いた実験によって、エクソソームはミクログリアに積極的に取り込まれ、取り込み後は細胞内でリソソームに輸送されることがわかった。今年度(24年度)は、このエクソソームのミクログリアへの取り込みが生体内でも起こるか確認するために、蛍光エクソソームのマウス脳海馬領域へのインジェクション実験を行った。エクソソームを投与したマウスを3時間放置した後、脳を取り出し切片を作製した。その後、ニューロン、ミクログリア、アストロサイトの各マーカー分子に対する抗体で免疫染色した後、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、エクソソームは、ミクログリアマーカーとの明確な共局在が見られた。ニューロン、アストロサイトマーカーとの共局在は観察されなかった。これらの結果から、ニューロン由来エクソソームの除去に関しては、ミクログリアが主な役割を担っていると考えられる。また、近年、アルツハイマー病の原因物質とされているアミロイドbetaペプチドがエクソソームに結合することが明らかとなっている(Yuyama K et al, J Biol Chem, 2012)。本研究課題において、このエクソソーム結合Abetaも、エクソソームと共にミクリグリアへ取り込まれることを、培養細胞系およびマウス脳で確認した。これらの結果は、Abetaの脳内クリアランスにおいてエクソソームが運搬体として働いている事を示唆しており、アルツハイマー病の病態発現においてエクソソームが関与する可能性も考えられる。
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