本研究においては、神経細胞死におけるIPASの細胞死制御機構の解析を行うことと、IPASノックアウトマウスを作製することでin vivoでの神経細胞死におけるIPASの生理機能の解明を目指すという二点を目的に解析を行った。最終年度である平成24年度は、特にミトコンドリアにおけるIPASとパーキンソン病原因因子PINK1-Parkin経路との関連性に注目した。その結果、IPASはミトコンドリア脱共役剤のCCCP依存的にPINK1およびParkinと結合し、その下流でユビキチン化されプロテアソーム依存的な分解をうけることがわかった。欠失変異体を用いた解析で、この結合はIPASのC末端側で起こることがわかり、さらにParkin siRNAを用いた解析によって、内在性ParkinによってIPASがユビキチン化を受けることが示された。IPASのC末端ペプチドを抗原とした抗体を作成して実験に用いたところ、実験的パーキンソン病誘発剤であるMPTP投与されたマウスの中脳黒質を含む中枢神経全般でIPAS mRNAおよびタンパク質の発現量が増大し、その局在は核ではなく細胞質であることがわかった。これらの結果はIPASがParkinの基質で、パーキンソン病においては分解制御を失ってタンパク質の発現量が増大し神経細胞死を引き起こしている可能性を示唆しており、その成果を学会にて発表した。IPASノックアウトマウスは理研CDBとの共同研究で作製が行われキメラマウスの作製まで完了した。期間内に完成できなかったが、今後ノックアウトマウスを作製しさらなる解析を行う予定である。
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