発生段階の脳において、神経細胞の軸索の形成およびその伸長方向は細胞外シグナルにより制御されている可能性が近年示唆されてきたしかしながらその詳細な分子メカニズムに関しては不明類点が多く解明すべき点が数多く残されている。 本研究では、軸索伸張を促進する細胞外分子としてnetrin-1に、細胞内で軸索伸長に必要とされる駆動力の発生に関与するクラッチ分子としてshootin1に着目することで、細胞外シグナルのよる軸索伸長の制御機構の解析を目指した。まずnetrin-1の刺激の応答し、shootin1のSer101およびSer249がリン酸化酵素PAK1によりリン酸化される。さらにリン酸化されたshootin1は成長円錐辺縁部の存在するアクチン繊維と強く相互作用することを見出した。この結果からshootin1のリン酸化修飾はshootin1の有するクラッチ分子としての活性を正に制御する可能性が考えられた。軸索の伸長には成長円錐においてアクチン繊維の逆行性移動を利用した駆動力の発生が必要と考えられている。そこでリン酸化shootin1が成長円錐において駆動力の発生に関与しているかTraction force microscope法を用いた解析を行った。その結果netrin-1刺激により成長円錐で発生する駆動力の顕著な上昇が認められた。しかし、この駆動力の上昇はshootin1の発現抑制を抑制した場合やpak1の活性を阻害した場合には有意に抑制された。以上の研究から、netrin-1刺激による軸索の伸長は、クラッチ分子であるshootin1のリン酸化修飾を通じた活性の制御を行うことで軸索伸長に必要な駆動力の発生に関与することが示唆された。
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