研究課題/領域番号 |
23700450
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関 貴弘 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50335650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シャペロン介在性オートファジー |
研究概要 |
シャペロン介在性オートファジー(CMA)活性をHaloTag (HT)システムを用い細胞レベルで観察する新規実験系を確立することを試みた。CMA基質の一つであるGAPDHにHTタンパク質を融合させたGAPDH-HTを培養細胞に発現させ、GAPDH-HTの細胞質からリソソームへの移行を可視化することに成功した。また、このGAPDH-HTのリソソームへの移行は、CMAに必須なリソソームタンパク質LAMP2Aのノックダウンにより抑制されること、及びCMAを活性化あるいは不活性化する化合物により促進および阻害されることから、GAPDH-HTのリソソーム移行は細胞内CMA活性を反映しており、これを観察することにより、細胞内CMA活性を1細胞レベルで観察する新規実験系の確立に成功した。また、GAPDH-HTを発現させるアデノウイルスベクターを作製し、初代培養神経細胞においてもこの実験系によりCMA活性評価が可能であることも明らかにした。 申請者らは脊髄小脳失調症14型(SCA14)の原因タンパク質である変異γPKCがCMA関連タンパク質であるHsc70と強く結合することを明らかにした。そこでこの新規CMA活性評価系を用いて変異γPKCがCMAに及ぼす影響を検討した。変異γPKC-GFPとGAPDH-HTを培養細胞株及び初代培養小脳プルキンエ細胞に発現させたところ、変異γPKCは細胞内CMA活性を有意に減弱させることが明らかとなり、SCA14発症に変異γPKCによるCMA障害が関与することが示唆される。 タンパク質分解系は神経機能維持において重要であり、様々な神経変性疾患における分解系の異常が報告されている。しかしCMAに関しては有用な評価系がなかったため、神経機能や疾患発症への関与が不明だったが、この新規CM活性A評価系はこれらの解明へのブレークスルーとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、新規CMA活性評価系の確立に成功し、それを用いて神経変性疾患の一つである脊髄小脳失調症14型(SCA14)の発症にCMA障害が関与する可能性を示すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
確立した新規CMA活性評価系を用いて、SCA14以外のSCA及びその他の神経変性疾患原因タンパク質がCMA活性に及ぼす影響を検討することにより、神経変性疾患発症におけるCMAの関与を幅広く検討していく予定である。また、新規CMA活性評価系を用いて化合物ライブラリーからCMA活性に影響する新規化合物の同定を試みる。それにより、新たなCMA活性調節メカニズムの解明に繋がることも予想される。また、既存もしくは新規に同定したCMA活性に影響する化合物をin vitro SCA14モデル(変異γPKC発現細胞)に処置することにより、CMA活性調節を介した新規SCA14治療薬の探索を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規CMA活性評価系を用いた培養細胞での実験が中心になるため、細胞培養用試薬及び器具を中心とした消耗品購入に多くの研究費を用いる予定である。
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