研究概要 |
研究実施計画に基づき、methamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核サンプルを用いて、カルシウム結合蛋白質の変化について検討した。その結果、PKC,CaMKIIおよびCaMKIV蛋白質量の有意な増加が認められた。また、actin重合に関与するN-WASP,WAVE,Cdc42 mRNA発現量に有意な変化は認められなかったが、脱重合に関与するADFおよびcofilinはmethamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核において、有意な増加が認められた。これらの結果から、methamphetamine誘発精神依存に、カルシウム結合蛋白質およびactin network制御因子が関与する可能性が示唆された。そこで、組織学的免疫染色法を用いてADFの側坐核での局在について検討したところ、dopamine神経のpre側およびpost側に局在が認められた。したがって、ADFはdopamine神経系においてactinの重合・脱重合機構に関与すると推察される。次に、アセチル化ヒストンH3およびH4の変化について検討したところ、methamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核においてアセチル化ヒストンH3の有意な増加が認められた。そこでクロマチン免疫沈降法を用いて、各種骨格調節に関連する遺伝子のプロモーター領域でのアセチル化の変化について検討した。その結果、methamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核において、細胞骨格形成に重要なneurexin,SVP-38,PSD95および神経可塑性に重要なGluR1,NR2A,NR2Bの有意な増加が認められた。以上の結果より、覚せい剤による精神依存形成に細胞内カルシウム動態とアクチン骨格ダイナミクスが重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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