研究概要 |
Methamphetamine (METH) 誘発精神依存獲得動物の側坐核における actin turnover の変化として、G-actin および F-actin 量の測定を行い、actin turnover の変化について検討した。その結果、METH 誘発精神依存獲得動物の側坐核において、G-actin および F-actin の有意な増加が認められた。次に、actin depolymerizing factor (ADF) 変異動物を用いて同様の検討を行ったところ、METH 処置による増加率は、野生型に比べ著明に減弱した。同様の条件下、野生型マウスでは METH 処置によりシナプスのマーカーである SVP-38 ならびに PSD95 の有意な増加が認められ、ADF 変異動物ではこの増加は有意に減弱した。次にカルシウム動態とシナプス形成の関連性について検討する目的で、カルシウムチャネルを構成するα1C サブユニット半欠損マウスを用いて、クロマチン免疫沈降法により神経の可塑性への関与について検討した。その結果、野生型マウスでは synaptic formation に関係する Nrxn, Syn, Dlg4 や神経の可塑的変化に関連する受容体 Gria1, Grin2a, Grin2b、さらに神経の可塑的変化に関連する酵素である Camk2a, Creb, Cdk5 遺伝子のプロモーター領域においてヒストン H3 のアセチル化の亢進が認められた。これらの亢進は、α1C サブユニット半欠損マウスでは有意に抑制されたことから、シナプス形成に L 型カルシウムチャネルが関与することが明らかとなった。以上の結果より、覚せい剤による精神依存形成に細胞内カルシウム動態とアクチン骨格ダイナミクスが重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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