研究概要 |
CAPS2 exon 3スキップマウスの行動解析により、様々な自閉症様行動を示すことが分かってきた。以下は野生型マウスと比較した場合におけるexon 3スキップマウスの形質である。(1)オープンフィールドにおいて、新奇物体を置いたときに、行動量の低下や、新奇物体への接触の低下が見られた。(2)高架式十字迷路において、不安が高進していた。(3)回転かごにおいて、恒暗状態ではサーカディアンリズムが消失するケースが見られた。(4)オープンフィールドを用いた社会性相互作用テストにおいて、社会性相互作用の低下が見られた。(5)母マウスの哺育行動に異常が見られた。 さらにこのマウスの解剖学的解析により、BDNFやクロモグラニンのトラフィッキングの異常やゴルジ体の形態異常が示された。電気生理学的解析においては、paired-pulse facilitationに異常が見られた。以上より、このマウスは自閉症モデルマウスとして有用であることが示された。 CAPS2タンパク質が有芯小胞分泌のどのステップに関与するかを詳細に検討した。その結果、以下のことが分かってきた。(1)CAPS2タンパク質はPHドメインを介してゴルジ体膜に結合し、その結合性はC2ドメインによって制御されている。(2)CAPS2タンパク質はGDP結合型のクラスII ARFタンパク質(ARF4, ARF5)のN末端に結合する。(3)CAPS2とARFの結合をブロックした場合、有芯小胞マーカータンパク質であるクロモグラニンはゴルジ体に集積する。(4)同様のクロモグラニン集積はCAPS2およびARFをノックダウンした場合にも起こる。(5)CAPS2をノックアウトした場合、神経細胞のゴルジ体の形態が異常になる。以上より、CAPS2タンパク質が有芯小胞のトラフィッキングに関与するメカニズムが分かってきた。
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