研究課題/領域番号 |
23700455
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
築地 仁美 独立行政法人理化学研究所, 運動ニューロン変性研究チーム, 研究員 (40455358)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 脊髄性筋萎縮症 / TDP-43 / SMN / splicing / snRNP |
研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)は、上位および下位運動ニューロンが選択的に変性し、脱神経により筋肉が動かなくなり死に至る神経難病である。近年、孤発性ALSで変性運動神経に異常凝集する蛋白質の主成分がRNA結合蛋白質TDP-43であることが判明した。また他のRNA結合蛋白質FUS/TLSもALS変性運動神経で異常凝集する。更に両蛋白質をコードする遺伝子の変異は家族性ALSを発症する。以上から、RNA代謝異常がALSの原因となっていることが示唆された。 我々は小児発症の運動神経変性疾患である脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy, SMA)とALSの類似性に着目し、SMA原因蛋白質であるSMNとTDP-43の関連性を検討した。TDP-43は、ALSの原因となる変異が集中しているGly-rich領域を介し、SMNと結合し、核内でSMNが濃縮する構造体であるgemに局在することがわかった。SMNはスプラシシング反応を担うU snRNAがU snRNPsとなるアセンブリーに必須であり、SMA患者やSMN発現抑制によりU snRNA量が異常となる。よってTDP-43の発現抑制後U snRNA量を定量したところ、SMN発現抑制と似た異常が観察され、TDP-43とSMNの機能的類似性が示された。 更に孤発性ALS患者の脊髄組織の免疫染色では、SMA患者と同様に、運動神経でgemが消失していた。またALS患者脊髄組織におけるU snRNA量を定量すると異常上昇していることがわかった。更にU snRNPの抗体染色により、ALSの運動神経特異的にU snRNP異常蓄積が観察された。よって、ALSではSMAと同様にU snRNPに異常があること、それが運動神経変性に至らしめる要因である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋萎縮性側索硬化症と脊髄性筋萎縮症という2種の運動神経変性疾患の類似性に着目し、両者の原因蛋白質であるTDP-43とSMNの機能的類似性を示し、両病態で類似したsnRNP異常を発見した。本研究は学術雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
TDP-43の異常蓄積が見られる他の神経疾患FTLD-TDPにおいて、snRNPの異常が見られるか観察する。更に、TDP-43のsnRNPアセンブリーにおける分子機能を解明する。TDP-43を用いたALSモデルマウスの作製と、臨床症状の改善の試み。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養、分子生物学的解析に必要な試薬を購入する。TDP-43を用いたALSモデルマウスの作製とフェノタイプの解析。snRNP異常に関与する蛋白質とRNA分子の同定。昨年度に施行予定であった、TDP-43により異常蓄積するRNA分子の同定には、RNAのdeep sequenceという高額がかかるが、昨年度は施行できなかったため、未使用額が発生した。今年度は、昨年施行予定であったRNAのdeep sequenceを行う予定で、その試薬費として約100万円の予算が必要である。
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