研究課題/領域番号 |
23700456
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 博紀 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, 研究員 (40568854)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 成長円錐 / 軸索ガイダンス / cAMP / cGMP / 微小管 |
研究概要 |
伸長中の軸索先端部に存在する成長円錐は,外環境中の誘引性あるいは反発性の軸索ガイダンス因子を認識し,軸索を定められた標的まで牽引する。成長円錐は,複数種の因子に同時に遭遇するため,それらの情報を統合し,進路を決定すると考えられる。多くの誘引性因子はcAMPの,反発性因子はcGMPの上昇を促すことから,これらのシグナルによって何らかの進路決定因子が拮抗的に制御される可能性が考えられる。そこで,本研究課題では,cAMPとcGMPによる微小管動態の拮抗的制御によって,成長円錐の進路が決定される可能性を検討する。平成23年度は,ニワトリ胚由来脊髄後根神経節細胞を用いて,成長円錐における局所cAMP/cGMP上昇によって成長円錐の進路転換,および局所的な微小管動態の変化が誘発されるかを検討した。ケージドcAMPおよびケージドcGMPを導入した成長円錐の片側に紫外レーザーを繰り返し照射することにより,人為的にcAMP/cGMP濃度を上昇させた。結果,成長円錐はcAMP濃度が上昇した側へ,また,cGMP濃度が上昇した側とは反対方向へそれぞれ進路を転換した。さらに,PKAを特異的に活性化するcAMPアナログの濃度勾配によって成長円錐が誘引されたことから,cAMPによる誘引にPKAが重要な役割を果たすことが示唆された。続いて,微小管と形質膜の動態を同時蛍光イメージングにより解析したところ,微小管の先導端への接触と接触部位の突出に正の相関が見られた。そこで,先導端への微小管の接触頻度が,局所cAMP/cGMP濃度上昇により変動するかを検討した。結果,接触頻度はcAMP濃度上昇によって増大し,逆に,cGMPによって減少した。以上の結果は,局所cAMP/cGMPシグナルによる空間的に非対称な微小管動態の制御によって,成長円錐の進路方向が決定されることを支持している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究実施計画に則り,成長円錐局所でのcAMPおよびcGMP濃度上昇が,微小管動態と進路方向に及ぼす影響を解析した。得られた結果は,作業仮説を支持するものであり,ほぼ当初の計画通り研究が進展している。さらに,微小管の先導端への接触と接触部位の突出に正の相関を見出した。これは,微小管によってアクチンあるいは膜動態が制御される可能性を示すものであり,cAMP/cGMPによる成長円錐進路決定機構の理解をさらに深める重要な発見だと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
免疫細胞化学を用いた予備実験の結果から,cAMP/cGMPによる微小管動態の制御はPKAおよびPKGに依存すると考えられる。これを成長円錐のライブイメージングを用いて明らかにする。さらに,cAMP/cGMPによる微小管動態の制御を担う分子を探索する。微小管と形質膜動態の同時蛍光イメージングの結果,微小管の接触時間と先導端の突出に相関がないことが明らかになった。さらに,cAMPおよびcGMPは,微小管の先導端への接触頻度をそれぞれ増大・減少させた事から,成長円錐周辺部への微小管の張り出しを制御する分子が候補として考えられる。このうち,PKAおよびPKGのリン酸化配列を含むものを選び,その候補分子が脊髄後根神経節細胞に発現しているか,およびPKA・PKGによって実際にリン酸化をうけるかを検討する。候補分子の選定が完了した場合には,リン酸化および非リン酸化模倣体の,あるいは,RNA干渉によるノックダウン用のプラスミドを作成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画通り,全ての研究費は消耗品の購入にあてる。
|