研究課題
本年度は前年度に続き多発性硬化症の研究に実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis: EAE)疾患モデルを活用した。研究手法は形態的な観察にとどまらず、多局所網膜電位の解析などを交え、総合的な視機能評価に基づいて判定を行った。申請者はMOGペプチド免疫後9日目のEAEマウスの血清中において、angiotensin II(Ang II)濃度が有意に上昇することを見出した。また培養アストロサイトや骨髄由来樹状細胞を用いたin vitroの実験から、AngII刺激によって両細胞におけるTLR4の発現が顕著に増加し、逆にAng II アンタゴニストで高血圧治療薬でもあるcandesartanにより、その発現上昇は抑制可能であることを突き止めた。またcandesartanをEAEマウスに経口投与すると、脊髄炎や視神経炎が軽症化されるということを見だした。特にTLR4の下流で活性化されるASK1の欠損マウスの場合には、EAEの発症率が半分以下に抑制されることを明らかにしている。また前年度は抗酸化物質spermidineを用い、視神経炎の重症度の緩和を組織病理学及び電気生理学的手法によって解明した。一方、Dock8欠損マウスにおいてはEAEによる視神経炎および脊髄炎が全く発症しないことを発見し、Dock8がT細胞の増殖および活性化や、樹状細胞における抗原提示能に関与することを解明した。さらに意外なことにDock8過剰発現マウスでもEAEの発症率が低下し、また発症した場合でも有意に軽症化することがわかった。上述したように研究期間全体を通じて遺伝子改変マウスを利用した多発性硬化症における視神経炎の発症メカニズムの解明と、薬剤を利用した視神経炎の治療研究を行った。
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