研究課題/領域番号 |
23700462
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
齋藤 文典 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第5部, 科研費研究員 (50435723)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シュワン細胞 / 代謝型グルタミン酸受容体 |
研究概要 |
これまでに、神経傷害時にGlutamine synthetase(GS)がzinc finger/Ring finger 1(ZNRF1)によりユビキチン化されプロテアソーム系で分解されることを明らかにした。さらに、神経細胞とシュワン細胞の共培養系において、シュワン細胞にGSを過剰発現させることでミエリン形成を有意に亢進することからGSがシュワン細胞の分化制御に関与することを報告してきた。平成23年度は、GS発現変化からシュワン細胞の分化調節にいたる分子機序について解析を行った。はじめに、GSの基質であるグルタミン酸がシュワン細胞の増殖に与える影響を解析した。初代培養シュワン細胞及びマウス坐骨神経にグルタミン酸を投与した結果、細胞増殖が促進された。このグルタミン酸による細胞の増殖は代謝型グルタミン酸受容体 (mGluR)アンタゴニストにより抑制されたことから、グルタミン酸がmGluRを介しシュワン細胞の増殖を制御することが示唆された。次に、グルタミン酸がシュワン細胞の分化に与える影響を解析した。グルタミン酸を神経細胞とシュワン細胞の共培養系に添加した結果、神経突起のミエリン形成を抑制した。また、mGluRのアンタゴニストの添加により、神経突起のミエリン形成が亢進された。さらに、グルタミン酸シグナルがシュワン細胞の脱分化に与える影響をマウスの坐骨神経傷害後モデルを用いて解析した。坐骨神経切断時にmGluRのアンタゴニストを局所的に投与した結果、神経傷害後のシュワン細胞の脱分化が遅延した。これらのことから、mGluRを介したグルタミン酸シグナルがシュワン細胞の増殖、分化の制御に関与することが強く示唆された。これら結果を日本分子生物学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ミエリン形成不全を起こすCharcot-Marie-Tooth病(CMT)のモデルマウスであるTremblar-JへのmGluRアンタゴニスト投与によるミエリン形成促進効果の検討および、その機構となる細胞内シグナルの解明である。平成23年度は、目的達成に向け、in vito およびin vivoにおいてグルタミン酸がシュワン細胞の分化・増殖に与える影響を解析すること、及びTremblar-JへのmGluR2アンタゴニストの坐骨神経投与よるミエリン形成不全への治療効果の解析の準備を進めることを計画していたが、研究実績の概要に記載したように当初の計画通り研究を進めることができ、mGluR2を介したグルタミン酸シグナルが、生体内においてもシュワン細胞の増殖に重要であり、このシグナルを制御することで、神経傷害時のシュワン細胞の脱分化も制御できる可能性を明らかにした。また、mGluR2の活性化からシュワン細胞の脱分化・増殖に至る細胞内シグナルに関しても解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画に基づき、ミエリン形成不全を起こすCharcot-Marie-Tooth病(CMT)のモデルマウスであるTremblar-JへのmGluRアンタゴニスト投与によるミエリン形成促進効果(in vivo)の解析を行う。具体的には、アンタゴニストを投与したTremblar-Jマウスの坐骨神経をプラスチック包埋しsemi-thin sectionを作製しトルイジンブルー染色によりミエリン形成を評価する。必要に応じて電子顕微鏡を用いて観察する。また、運動神経障害の症状改善の検討を、回転する棒の上にマウスをのせマウスが落下するまでの時間を測定する(ロタロッドテスト)を用いて解析する。これらの結果と前年度の研究結果をまとめ、国内外の神経科学関連学会において発表し、更に論文として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時の研究計画に基づき、研究の遂行に必要な各種薬剤、試薬、抗体、消耗品、実験用動物等の購入および、研究成果を発表するための出張費、論文別刷費用等に使用する予定である。
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