これまでに、神経傷害時にGlutamine synthetase(GS)がzinc finger/Ring finger 1(ZNRF1)によりユビキチン化されプロテアソーム系で分解されることを明らかにした。さらに、神経細胞とシュワン細胞の共培養系において、シュワン細胞にGSを過剰発現させることでミエリン形成を有意に亢進することからGSがシュワン細胞の分化制御に関与することを報告してきた。本研究では、GS発現変化からシュワン細胞の分化調節にいたる分子機序を明らかにすることを目的とした。 前年度は、Glutamine synthetase (GS) の発現変化からシュワン細胞の分化調節にいたる分子機序について解析を行い、GSの基質であるグルタミン酸が代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)を介してシュワン細胞の増殖・分化の制御に関与することを明らかにした。これまでに、mGluRには8種類のサブタイプが存在することが報告されている。 本年度は、シュワン細胞の分化に関与するmGluRのサブタイプの同定および細胞内シグナルの解析を行った。初代培養シュワン細胞に各mGluRに対する特異的阻害剤の添加、および、各mGluRのノックダウン実験を行い、mGluR2がシュワン細胞の増殖・分化の制御に関与することを明らかにした。さらに、mGluR2を介したシグナルが、細胞増殖や分化を制御することは報告されているErk経路を活性化することで、シュワン細胞の増殖・分化を制御することを明らかにした。これら結果を日本分子生物学会にて発表した。
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