研究課題/領域番号 |
23700472
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
桑子 賢一郎 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (30468475)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
橋核神経細胞の小脳への軸索投射時期および小脳顆粒細胞とのシナプス形成時期を正確に同定するために、蛍光トレーサーによる軸索標識法およびシナプス特異的マーカー抗体による免疫組織化学的手法を用いて解析を行った。その結果、橋核神経細胞の軸索は生後1日目から6日目の間に小脳顆粒細胞層へと到達し、明らかなシナプス形成は生後8日目以降に確認された。次に、橋核神経細胞の標的細胞である小脳顆粒細胞由来のシグナルによって橋核神経細胞で発現が変動する転写因子群を抽出するために、小脳顆粒細胞と橋核神経細胞の共培養系を用いてDNAマイクロアレイ解析を行った。そして、小脳顆粒細胞の存在化で3倍以上の発現変動がみられた転写因子群を抽出し、さらにin situ hybridizationデータベースを参照して、上記の組織学的解析で明らかになった軸索伸展からシナプス形成への移行期にin vivoで発現変動する分子を選択し、これまでに13種類の転写因子まで絞り込んだ。さらに、移行期を制御する候補転写因子の機能的スクリーニングを行うために、強制発現ベクターや発現抑制ベクターの構築を進めた。また、機能的スクリーニングのための解析系として子宮内エレクトロポレーション法の確立および初代神経細胞培養系の最適化も行った。本年度の研究により、橋核神経細胞の軸索伸展からシナプス形成への移行期の同定、さらにその移行期に急激に発現変動する転写因子群が存在することが明らかとなり、神経回路形成を制御する遺伝子発現プログラムの解明に近づいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のとおり、橋核神経細胞の軸索伸展からシナプス形成への移行期の同定と、移行期に発現変動する転写因子群の抽出に成功し、今後の機能的スクリーニングのための準備も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に抽出した候補転写因子群の機能的スクリーニングをまず初代神経細胞培養系で行い、さらに子宮内エレクトロポレーション法を用いてin vivoで検証し、軸索伸展からシナプス形成への移行期の細胞内発現プロファイルを変動させて移行を制御するマスター因子を同定する。また、移行を制御する転写因子群が同定された後には、初代神経細胞培養系と分子生物学的手法を組み合わせて、それらの転写因子の発現を制御する上流シグナルの同定も行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。次年度の研究費は、試薬類や動物の購入などの消耗品、および学会発表などの旅費に充てる予定である。
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