研究概要 |
本研究では当初ミクログリア細胞の異種グリア間連関に関する新しい知見を得ることを目的とした。グリア細胞は神経細胞の活動依存的にシナプス伝達効率を修飾したり(アストロサイト)、シナプスの刈込みに関与すること(ミクログリア)などが明らかとなって来ておりグリア細胞間連関の解析に際し神経細胞の介在を考慮することは重要と考えられる。そのためまず神経活動依存的なニューロンに対するミクログリア細胞の介入を2光子顕微鏡法を用いて観察を行うこととした。ミクログリア細胞が蛍光標識されているIba-1 EGFPマウスから大脳皮質スライス標本を作製し、2/3層錐体細胞においてシャドウパッチクランプ法(Kitamura k et al., 2008)を適応し、ニューロンを蛍光標識すると同時に経電極的に電流注入を行い、頻回の活動電位を励起させた。この神経活動量に依存的に神経細胞軸索の容積増大が生じ、容積変化量に応じてミクログリア細胞突起の軸索への集積を確認することが出来た。樹状突起においては軸索で認められるような容積増大およびミクログリア突起の走化性変化は認められなかった。また軸索の容積増大によりミクログリア突起の化学的誘引物質の局所的な放出が予想された。薬理学的検討の結果、容量依存性陰イオンチャネルとこれを放出経路とするグルタミン酸およびATPの関与が示唆された。ミクログリア細胞のグルタミン酸感受性に関しては2光子グルタミン酸アンケージングの手法を用いて更に検討を行った結果、形態学的特徴とグルタミン酸感受性に関連性が有る可能性が明らかとなった。過剰興奮を来した神経細胞軸索は細胞体での過分極を伴う非常に大きな膨張をきたすことが有るが、ミクログリア細胞の軸索への接触や貪食により膜電位の再分極が認められることから、これらの介入は神経細胞障害性ではなくむしろ保護的に作用することが明らかとなった。
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