研究課題/領域番号 |
23700482
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
武井 智彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所モデル動物開発研究部, 室長 (50527950)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 把握運動 / 運動制御 / 脊髄 / 一次運動野 / 霊長類 |
研究概要 |
本研究の目的は、把握運動の制御において大脳皮質一次運動野から発せられた下行性運動司令が脊髄神経活動および筋活動レベルにおいてどのように階層的に変換されているのかを解明することである。特に最終的な目標として、"大脳皮質・脊髄内の神経活動および上肢筋活動を多チャンネル同時計測"を"覚醒下の霊長類において行う"ことを目指している。 本年度の研究成果として、1頭のサル(アカゲザル、オス)に対して(1)下位頸髄(C6-C7)へからの多極電極の埋込み手技を成功させたこと、(2)この電極を用いて、麻酔下において脊髄神経活動および上肢筋群活動の多チャンネル同時計測を成功させたことが挙げられる。更に当初の予定を上回った成果として(3)このプレパレーションを用いてサルが"覚醒"し把握運動を行なっている最中の脊髄神経活動および筋活動の多チャンネル同時計測できることが明らかとなった。その結果、運動時の脊髄神経活動記録方法として、信号の安定性の観点から、従来の単一ニューロン活動法に比べて局所電場電位(local field potential: LFP)の記録が有効であることが示唆された。この結果は、次年度以降皮質・脊髄神経活動の同時計測および解析方法を選択する上で重要な知見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標として、麻酔下のサルにおいて筋活動、脊髄、大脳皮質の神経活動を同時に記録するプレパレーションを作成することを計画していた。その結果、1頭のサルにおいて(1)筋電図電極の多チャンネル埋込み、(2)脊髄(頸髄C6-C7)への多極電極の埋込みに成功し、さらに(3)サルが覚醒して到達-把握運動を行なっている際の筋活動・脊髄神経活動を記録することに成功した。これは当初の予定を超えて大きく進展した点であった。一方、同じサルに対して大脳皮質への電極埋込みおよび神経活動の同時記録を達成することはできなかった。その要因として、(1)先に埋め込んだ脊髄電極からの信号の精度が予想以上に早く(約3週間ほど)低下して単一ユニット記録が持続できなかったこと、(2)その短期間に繰り返し手術を行うことはサルに対する負担が高いと判断されたことが挙げられる。そのため、本研究の目的を達成するために、脊髄および大脳皮質から記録する神経信号として、単一ユニット信号ではなくLFPを用いることが有効であることが確認された。これは次年度以降の研究推進方策を定める上で重要な知見であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から、慢性的な脊髄-大脳皮質の同時記録を達成するために、単一ユニット信号ではなくLFPを用いることが有効であると確認された。そのため、次年度以降、よりLFPの記録を脊髄―大脳皮質間で同時記録することを目標として実験・手術計画を策定することを予定している。更に、本年度の実験で、覚醒状態での筋活動-脊髄神経活動の記録に成功したことから、亜急性実験による手術手技を行なったサルに対しても覚醒下の行動評価ができるような実験を遂行していく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画として、筋活動―脊髄神経活動―大脳皮質神経活動の同時計測を行うプレパレーションを確立し、さらに覚醒下での行動評価および神経筋活動記録を行うことを予定している。そのため、脊髄および大脳皮質からの神経活動記録用電極の購入、把握課題装置の作成・購入、その他動物用医薬品、実験環境整備のための物品購入を予定している。
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