研究課題/領域番号 |
23700489
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大橋 陽平 東京大学, 大学院医学系研究科, 特任助教 (20597629)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / オプトジェネティクス / 霊長類 / 大脳皮質 / 記憶 / 高磁場fMRI / レンチウイルスベクター / アデノ随伴ウイルスベクター |
研究概要 |
本研究は、霊長類下部側頭葉の神経細胞群が、記憶の符号化・想起時に果たす役割を、光遺伝学的手法を用いて、その神経細胞活動を制御することで、明らかにすることを目的としている。平成23年度においては、青色半導体レーザー(独オミクロン社製)を導入し、実験系の立ち上げ及び予備的検討等を実施した。以下、個別に記載する。1、ラットを用いた光遺伝学実験系の確立 レンチウイルスベクターを用いて、ラット小脳プルキンエ細胞特異的にチャネルロドプシン2及びハロロドプシンを発現させ、その神経細胞活動を光照射により制御可能であることを示した。また、小脳第9小葉のプルキンエ細胞を特異的に標的とすることで、神経細胞活動だけではなく、血圧の制御をも可能にした。2、サルへの遺伝子導入と新型オプトロードの開発 3頭のマカクサルを用い、MRIで同定したその視床及び大脳皮質に対し、レンチウイルスベクターによる遺伝子導入(チャネルロドプシン2及びハロロドプシン)を実施した。並行して、光ファイバーを内包したガラス被覆式タングステン電極(オプトロード)を開発した。これにより、サルのような大型動物においても、低侵襲かつ高精度での、光照射・蛍光量測定・電気生理学記録を可能にした。 上記2点の他、遺伝子導入効率の向上及び組織毒性の軽減を目的として、レンチウイルスベクターのカラム精製、アデノ随伴ウイルスベクターの導入及び血清型の検討を進めている。以上の結果より、ラットだけではなく、マカクサルにおいても光遺伝学の適用は十分に可能であり、そのための準備段階はほぼ終了したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階では、問題なく進展していると言える。マカクサルの使用にあたっては、使用可能個体数に制限があるため、今年度は主にラットを用いて、実験系の確立を行った。また、本研究の実施にあたっては、高品質のウイルスベクター(レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター)の安定した供給、高性能のオプトロード(光照射と電気生理記録を同時に可能にする電極)の作製が必須である。これらの供給体制も確立できたため、研究計画の初年度としての目標は達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、以下を検討している。1、マカクサルにおいて、視覚対連合記憶課題の遂行に関連した活動を示す神経細胞が多く集まっているとされる下部側頭葉に、再現性良くウイルスベクターを接種するための手法の開発を行なう。2、ウイルスベクター接種により、脳内でチャネルロドプシン2及びハロロドプシンを発現したマカクサルにおいて、光(青色光または橙色光)照射下に機能的磁気共鳴画像法を適用し、BOLD信号の取得を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
主にウイルスベクターを作製するための遺伝子工学及び細胞培養試薬、免疫組織化学試薬、光学部品類、動物飼育用飼料を中心とした消耗品類の購入にあてる予定である。
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