研究課題
本研究は、霊長類下部側頭葉の神経細胞群が、記憶の符号化・想起時に果たす役割を、光遺伝学的手法を用いて、その神経細胞活動を制御することで、明らかにすることを目的としている。平成25年度においては、前年度までの成果を踏まえ、主に以下2点を推進した。それぞれ個別に記載する。1、サルにおける光遺伝学的機能的磁気共鳴画像法(opt-fMRI)の検討昨年度に構築したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV5-CaMKIIa-ChIEF-HA-P2A-eNpHR3.0-EYFP-WPRE-hGHpA)及びレンチウイルスベクター(Lenti-CaMKIIa-ChIEF-tdTomato-WPRE)をサルの視床に接種した。接種後約40日を経て、オプトロードを用いて、電気生理学的に青色光刺激反応性の神経細胞の存在を確認した。続いて、同定した反応性の神経細胞が存在する領域の青色光刺激下/非刺激下(block design)において、麻酔下にて機能的磁気共鳴画像の取得を複数回試みた。しかしながら、BOLD信号は、刺激直下(視床)及びその投射先(大脳皮質)においても、その検出は困難であった。2、ラットにおける光遺伝学的機能的磁気共鳴画像法(opt-fMRI)の検討上記サルの結果を踏まえ、opt-fMRIの条件を最適化するために、再度ラットを用いた検討を実施した。結果、再現性良くBOLD信号を得るためには、1)オプシン蛋白質の高発現が必要、2)光照射は広範囲である方が良い、3)光強度(ワット数)には最適値がある(一定値を越えるとBOLD信号の取得が困難となる)、が明らかとなった。今後は上記知見に基づいて、記憶課題遂行中のマカクザルに光遺伝学的手法を適用し、記憶想起と霊長類下部側頭葉の神経細胞群の因果関係を解明する予定である。
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