研究課題/領域番号 |
23700493
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山川 俊貴 静岡大学, 工学部, 助教 (60510419)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 形状記憶合金 / MEMS / 皮質脳波 / 低侵襲 / てんかん |
研究概要 |
難治性てんかんの病巣特定や脳機能マッピングなどの目的で皮質脳波が用いられるが、計測には硬膜下電極を頭蓋内に留置するための開頭手術が必要で侵襲性が高い。さらに、留置後の電極の位置変更や摘出にも再度の開頭を要する。そこで、形状記憶合金ガイドに半導体微細加工技術を用いて微小電極を実装することで、5mm程度の穴から頭蓋内に挿入でき、硬膜下の所望の位置に電極を展開する機能をもつ硬膜下電極を開発し、低侵襲な皮質脳波計測を実現する。この技術を低侵襲かつ高精度なてんかん焦点診断や、従来計測が困難だった部位の皮質脳波計測などに役立てるために、機能と安全性を厳格に検証し、早期の臨床応用と実用化を目指す。これらを目的とし、具体的に以下の研究を実施した。フレキシブル基板に模擬MEMS電極を実装して、電極ならびに配線部の電気的特性と機械的特性を評価する。生理食塩水中でのインピーダンス特性の評価、電極および配線の繰り返し曲げ耐性の評価について評価を行った。その結果、フレキシブル基板材料として3層のポリイミド、配線材料としては銅箔が適当であり、また生体適合性向上のため銅箔には金メッキを施すこととした。SMAガイドを多種の絶縁膜材料(PTFE、ポリイミド、パリレン等)を用いて被覆し、電気的・熱的絶縁性を評価した結果、SMAガイドの被覆材料としては膜厚50umのPTFEチューブが適当であると判断した。SMAガイド上にMEMS電極アレイを実装し特性を評価した。電極、基板材料の各種インピーダンス特性評価を行い、電極は皮質脳波計測に適した値(1kΩ程度)で、また基板材料の十分な絶縁性(10MΩ以上)をもつことが確認できた。動物実験による電極機能の基礎的な評価(サル体性感覚誘発電位計測)により試作電極を用いて皮質脳波計測が可能であることを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細加工技術を用いたフレキシブル基板への電極実装と最適材料の探索、実装した電極の電気的特性の評価、動物実験における皮質脳波計測機能の検証が完了し、当初予定通りに研究は進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
フレキシブル基板上に1~5mm間隔で電極を実装した高密度硬膜下格子状電極を作製し、臨床診断上十分な空間分解能を達成する電極実装密度、ガイドの記憶形状および電極配置を明らかにする。また、それを実現するSMAガイドとMEMS電極アレイを試作し機能を評価する。具体的には、生理食塩水中の模擬電流ダイポール計測において擬似脳波源に対する空間分解能を導出する。また、動物実験においてサルの体性感覚誘発電位の高密度計測を実施し、皮質脳波に対する実質的空間分解能を明らかにする。さらに、ラット海馬スライス等のてんかんモデル動物におけるてんかん性放電の計測を行い、焦点診断高精度化への有効性を検証する。なお、当初の予定では1mm以上の空間分解能を目標としていたが、臨床上そこまでの分解能は不要で、かつ電極数の増大に伴うチャンネル数の増加により実用性が低下することから、本研究においては実用性を重視し、医学系専門家の助言を参考にチャンネル数を32チャンネルに制限し、かつ目標の空間分解能を5mm程度に変更することとした。試作電極の長期間(~3週間)の留置による脳組織に対する損傷の有無を細胞レベルで確認し、臨床実験に向けて本手法の安全性を厳格に検証する。サルへの長期留置と患部組織の生理検査(H-E染色等)で生体親和性と手技の安全性を検証する。研究成果を取りまとめ、適宜学会発表や論文投稿を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度においては予定より少ない試作回数で目標を達成することができたので、その分の予算を本年度の基板形状・電極配置の最適化ならびにSMAガイドの記憶形状の最適化に利用し、より多くの試作を実施することで本手法の臨床上の実用性や有効性を高める。特に、サルの発作モデルにおけるてんかん焦点推定では、電極の留置のしやすさや留置部位に応じて様々な形状の電極アレイを試作する必要があるので、試作~動物実験~改良試作のサイクルを予定していたより高い頻度で繰り返し、目標の早期達成を目指す。上記の研究を実施するため当初より多くの電極試作と動物実験を行う目的で、消耗品費と国内出張費に平成23年度の繰越金を充てることとする。
|