研究課題
本年度ではスパイン可視化のより良い手段を前年度に引き続き探求した。スパイン(シナプス後部)は脳の神経細胞ネットワークにおいて中心的な役割を担っている。前年度に使用を想定していた量子ドットが予想に反して十分な発光が得られなかった等の問題があったが、検討を重ね発光の特性が共焦点顕微鏡の観察・測定に適しているものを見出した。現在これを用いて神経細胞の可視化を検討してきており、今後克服すべき課題も見出されたが近い将来解決可能と思われ、3次元可視化のための新規な方法として論文を準備中である。また、計画に記載した前頭前野の神経細胞スパインとオキシトシンに関する研究の実行過程において、驚くべきことに実はオキシトシンの脳実質内濃度はよくわかっていないことが判明した。内在性および外部から投与したオキシトシンの濃度が定量できなければ、オキシトシンの効果を見定めることは難しい。しかし現在用いられている方法は非常に不十分なものであった。よって、まずオキシトシンの定量法の開発に努めた。具体的には放射性標識されたオキシトシンを用いることにより、定量作業中に失われる分を考慮したオキシトシンの正確な濃度を決定する方法の確立に成功した。現在の研究以外への波及効果(ヒト試料にも適用可能)も大きいと考えられ、現在、論文を投稿準備中である。さらに、前頭前野神経スパインの機能解析を試みた。スパインが変化した結果、シナプス機能が変化することが前頭前野の機能発現上非常に重要と考えられる。そのため、多電極でシナプス活動による局所電場電位を測るための測定系を構築した。現在までに予備的な結果を得つつある。年度末での研究代表者の転任により再構築が必要であるが、今後オキシトシンによるシナプス機能の変化の測定を重ねさらに発展することが見込まれる。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
The Journal of steroid biochemistry and molecular biology
巻: 131(1-2) ページ: 37-51
DOI:10.1016/j.jsbmb.2011.10.004
PLoS One
巻: 7 ページ: e34124
DOI:10.1371/journal.pone.0034124
Cerebral Cortex
巻: 22(4) ページ: 926-936
DOI:10.1093/cercor/bhr164