研究概要 |
本年度は、昨年までに構築した多チャンネル近赤外分光法(NIRS)を用いたリアルタイム解析システムを用い、運動想像と組み合わせたニューロフィードバック訓練による脳卒中後片麻痺に対する介入研究を継続した。最終的に、発症後3ヶ月以上経過した脳卒中後片麻痺患者20名に参加していただき、そのうち10名は対側運動前野の活動をフィードバック(NF群)、10名は無関係な信号をフィードバックした(コントロール群)。2週間の訓練前後で、NF群ではFugl-Meyer手指スケールが4.5±3.7から7.5±4.5に改善したが、コントロール群では4.9±3.4から5.7±3.7への改善にとどまった(交互作用:F2,36=15.5, p<0.001, repeated measures ANOVA.)。さらに、運動想像中の運動前野活動変化に関しても、NF群がコントロール群と比較してより大きく、さらに手指機能の改善度と運動前野機能の間に正の相関関係が認められた。これらの結果を論文化し、学術雑誌にて報告した。 研究期間全体としての成果としては、NIRSを用いたリアルタイム解析アルゴリズムの構築を行い、NIRSを用いたニューロフィードバックシステムを開発したこと、健常者を対象とした研究で、ニューロフィードバックによって特定の脳領域の活動が制御可能であることを証明したこと、およびニューロフィードバックを用いた運動想像訓練による脳卒中後片麻痺への臨床的効果を世界ではじめてランダム化比較試験を用いて証明したことが主な点として挙げられる。ニューロフィードバックを用いた訓練は、急性期以降の脳卒中後片麻痺患者に対する新たな非薬物治療としての有効性が示唆され、今後脳卒中患者にとどまらず、多くの患者および健常高齢者などに対する簡便で安全な訓練法としての臨床応用が期待される。、
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