平成24年度は内生的な好みに基づく意思決定(選択)課題を遂行中のサル外側前頭前野および尾状核前部から神経活動(単一神経細胞活動および局所場電位)を記録し、解析をさらに進めた。外側前頭前野の単一神経細胞活動および単一局所場電位は、報酬を選択する課題においても、行為の目的である報酬の種類よりも、実際に選択するときの動作(本実験では眼球運動)の目標空間位置を強く表現していることが分かった。次に、そのような神経細胞集団の活動から、刺激の物理的特徴(色)や動作目標の空間位置にかかわらず、選択する報酬の種類を読み取れるかどうかを調べるために、同時に記録した複数(16)チャンネルの局所場電位から選択する報酬の種類を読み取ることを試みた。前頭前野内の電極位置によっては、選択肢の呈示から実際の選択行動までの間に約70パーセントの確率で選択する報酬の種類を正しく読み取ることができた。さらに、同時に考慮に入れるチャンネル数を増やすにつれて選択を正しく予測できる確率は高まった。また、尾状核前部の単一神経細胞活動には動作目標の空間位置ではなく選択する報酬の種類のみを表現しているものが見られた。そのような神経細胞活動は選択肢の呈示前から見られることがあった。また、外側前頭前野の神経活動は内生的な好みに基づいて選択するときと外部からの指示に従って選択するときで報酬の種類に関する選択性の現れ方が異なる場合が多かったが、尾状核は比較的一致する傾向があった。以上の結果から、内生的な好みに基づいた選択において、尾状核は選択行動を具体的に準備する前から行為の目標を表現し、外側前頭前野の神経細胞集団はそれに応じて全体として活動を変え、その目標を得るために適切な行動の準備に関わっていると考えられる。
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