研究課題/領域番号 |
23700512
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
林田 直樹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40420517)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 熱ショック転写因子 / HSF2 / ポリグルタミン病 / ハンチントン病 / 神経変性疾患 / 蛋白質分解 / ヒストンメチル化 / 細胞防御 |
研究概要 |
熱ショック転写因子HSF2は哺乳類では4種類存在する熱ショック転写因子群の1つであり、神経発生や生殖細胞の分化に関与することが明らかにされているが、熱などのストレスに対して細胞を防御するかはわかっていない。今回、HSF2がポリグルタミン蛋白質(細胞内で凝集し細胞毒性を発揮する)の凝集体形成を抑制することを突き止めたほか、その機構の一部を解析したので報告する。 主要なポリグルタミン病であるハンチントン病のモデルマウスR6/2とHSF2欠損マウスを交配させることによりHSF2欠損ハンチントン病マウスを作製したところ、寿命が顕著に短縮することがわかった。また、脳におけるポリグルタミン蛋白質の凝集体形成を調べたところ、HSF2の欠損によって顕著に亢進していた。これらの結果から、HSF2がポリグルタミン蛋白質の凝集および細胞毒性を抑制していることが示唆された。続いて、HSF2による細胞防御機構を明らかにするため、HSF2をノックダウンさせたHeLa細胞を用いたマイクロアレイ解析を行ったところ、蛋白質分解に関与すると考えられる32個の新たなHSF2標的遺伝子群を得た。HSF2は転写因子であるが、その転写活性化機構は全く明らかになっていない。そこで、プレ実験から得ていたデータに基づき、ヒストンH3K4メチル化複合体の構成因子であるWDR5とHSF2との結合を293細胞を用いて in vivo で調べたところ、互いに相互作用していることが明らかとなった。続いて、HSF2とWDR5の蛋白質を精製し、in vitro での相互作用を調べたところ、HSF2はWDR5のC末端に結合していることがわかった。これらの結果から、HSF2がH3K4メチル化酵素複合体と相互作用して蛋白質分解に関与する標的遺伝子群の転写を促進し、細胞防御に働いている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間で合計7つの研究が計画されているが、そのうち平成23年度に予定していた標的遺伝子の同定が達成されたほか、平成24年度に計画されている実験の一部もデータが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
HSF2欠損マウスを用いた動物実験については結果が得られたが、HSF2トランスジェニックマウスを用いた実験についてはまだモデルマウスの交配段階であるので、動物実験の進行により注意しながら研究を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度と大幅な変更はなく、消耗品の購入および実験動物の維持費用などが中心になるが、これらにアルツハイマー病モデルマウスの購入が加算される予定である。
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