本研究では、日本人において高頻度に認められる HLA-B*51:01遺伝子を組み込んだ高度免疫不全マウス「NOK/B51Tgマウス」を作製し、さらにそのマウスにヒト造血系幹細胞(CD34細胞)を移植して作製した「ヒト化NOK/B51Tgマウス」を用いて、HIV-1感染に対するヒトT細胞の免疫応答の解析を行い、HIV-1感染マウスモデルの構築を検討した。 ヒト化NOK/B51Tgマウスでは、CD34細胞移植後10週目にヒトT細胞が検出された。ヒト化NOK/B51TgマウスにHIV-1を感染させると、感染2週間目のプラズマ中からHIV-1が検出され、少なくとも感染6週目まで検出された。HIV-1感染マウスのヒトCD4T細胞の割合は感染4週目から減少し、非感染マウスのそれと比べ有意な差が見られ、HIV-1の感染成立が確認できた。HIV-1感染に対するヒトCD8T細胞の免疫応答を調べるため、HIV-1感染後のヒト化NOK/B51Tgマウス末梢血中のヒトCD8T細胞の表現型解析を行った。感染4週目と6週目の末梢血中では、細胞傷害活性能を持つlate effector memory CD8T細胞とeffector CD8T細胞の割合が増加していることが明らかなった。また細胞傷害活性能の指標となるCXCR1とCX3CR1を発現しているヒトCD8T細胞の割合を調べた結果、HIV-1感染マウスでは非感染マウスに比べその割合が有意に増加していた。さらにHIV-1 Gag ペプチドを用いたELISPOTアッセイでは、HIV-1感染マウスの脾細胞からGagペプチドに反応した細胞が検出された。 以上の結果から、ヒト化NOK/B51TgマウスはHIV-1感染に対してHIV-1特異的免疫応答を誘導することが示唆された。今後更なる改良を加えることで、HIV-1感染マウスモデルとしての有用性が期待される。
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