研究課題/領域番号 |
23700514
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大塚 正人 東海大学, 医学部, 講師 (90372945)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トランスジェニックマウス / 部位特異的遺伝子挿入 / Cre-loxP / 顕微注入 |
研究概要 |
当該年度は、以下の3点に関して進めた。1)遺伝子導入効率の改善:これまでDNAで供給していたCre組換え酵素をmRNAで供給することにより、より効率良く目的遺伝子をゲノムに挿入できる(従来の効率である4-5%以上)可能性がある。そこで今回、Cre mRNA(コドン最適化されたiCreを使用)を合成し、既に動くことが分かっているドナーベクターと共に受精卵に顕微注入した。その結果、11-45ng/ulの濃度のmRNAを注入した場合は胚が全く得られず、5ng/ulで顕微注入した時のみ、わずか2個体の胚を回収することができた。そのうち1個体(50%)が目的の組換え体であることが分かった。mRNAを用いることにより効率改善が期待される結果が得られたものの、胚の致死率が予想以上に高かった。2)時期・組織特異的な遺伝子発現系の確立:哺乳類Kox1遺伝子のKRABリプレッサードメインを用いたドキシサイクリンによる遺伝子発現誘導系の確立を目指した。まず、そのための発現コンストラクトを作製し、細胞レベルで検証を行うために、piggyBacトランスポゾンシステムを利用してES細胞へ導入した。得られたクローンの解析を行った結果、1ug/mlのドキシサイクリンで目的遺伝子発現が誘導できること、及び遺伝子ノックダウンにも応用可能であることが分かった。なお、組織特異的プロモーターを用いた遺伝子発現系のPITT法への応用も進めつつある(新たに作製したコンストラクトを用い、現在Tgマウスを作製中である)。3)Dre-rox系による、コンディショナル発現系の開発:Dre組換え酵素依存的に緑(eGFP)から赤(tdTomato)に蛍光が変わるDreレポーターマウスをPITT法で作製した。そこから得た受精卵の2細胞期受精卵の片方の細胞核にDre発現ベクターを顕微注入し、赤緑蛍光モザイク個体になることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画より進行がやや遅れている理由は以下の2つによる。1)コンストラクト作製に時間を費やしたこと、及び2)顕微注入は学内の研究支援センターを利用して行っているが、2011年度中後半は予想に反して他の利用者のマウス作製依頼が集中してしまったため、顕微注入予定を遅らせざるを得なかったこと、による。特にTg作製法自体の技術的な理由ではないため、次年度は本研究計画を継続し結果を出していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に、学内の研究支援センターを利用して行う予定の顕微注入について、他の利用者のマウス作製依頼が集中して予定が遅れてしまったので、2012年度に行うこととする。それを含め、以下の3点について研究を進める予定である。1)Cre mRNA導入による遺伝子導入効率の改善:当該年度の実験では、Cre mRNA濃度が適切でなかったためか胚の致死率が予想以上に高かったため、mRNAの至適濃度を検討していきたい。それにより、10%以上(CreをDNAとして注入していた場合の2倍以上)の挿入効率を達成できるようにしたい。2)コンディショナルアリル(floxedアリル)の挿入:当初は、loxP配列をメチル化して挿入時のfloxedカセットの欠失を抑制することによって、floxedアリル挿入を計画していたが、最近の報告から別の酵素(PhiC31インテグラーゼ)を用いて部位特異的遺伝子挿入が可能であると分かったため、よりシンプルなPhiC31の系を我々のシステムに付加することとする。その為に、変異loxP配列の他にattP配列も有する種マウス(目印がゲノムに挿入されたマウス)を新たに作製してfloxedアリルの挿入法を確立する。新たな種マウスは既にキメラマウスまで作製されており、今後、その実用性を検討していく。3)時期・組織特異的な遺伝子発現系の確立:Nephrin、及びThy1プロモーターを用いてeGFP、あるいはDre酵素を発現するTgマウスをPITT法で作製し、その組織特異的遺伝子発現パターンを検証する。Dre発現マウスに関しては、Dreレポーターマウスと交配して得られたダブルTgマウスを用いる。また、ドキシサイクリンによる遺伝子発現誘導型コンストラクトのTgマウスも作製して、in vivoでの発現誘導能を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」分については、進行が遅れていたTgマウス(組織特異的プロモーターを用いたもの)の作製に使用する。また解析を効率よく進め、研究が遅れている分を補うために、実験補助員を雇用する予定である。2012年度の直接経費を用い、コンストラクトを作製する際に大腸菌の培養を行うために必要なインキュベーターを購入する。また、マウスへの顕微注入、コンストラクトの塩基配列の確認等については、学内の研究支援センターを利用して行うため、それらに要する費用に研究費を用いる。また、その解析には実験補助員に手伝ってもらうが、「次年度使用額」で不足する謝金分を2012年度の直接経費から補う。得られた成果は、国内外の学会で発表すると同時に英文原著論文として投稿する予定であり、それらに要する費用として研究費を用いる。
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