本研究計画では、申請者が開発したターゲットトランスジェニック(Tg)マウス作製法(PITT法)について、1)組織特異的プロモーターの使用、2)Dre-rox組換え系への応用、3)floxedコンストラクトの挿入系の確立、4)誘導遺伝子発現系の構築、を実行し、技術的可能性を評価すると同時に、学術的研究に有用なマウスリソースの開発を行うことを目指した。以下が最終年度までの結果である。 1)、2)腎臓タコ足細胞での遺伝子発現を目的としたNephrinプロモーター、脳神経系での発現を目的としたThy-1プロモーターのTgマウス作製を行い、共に目的のTgマウスを得ることに成功した。NephrinプロモーターTgマウスの解析からは、Rosa26座位における組織特異的プロモーターの有用性を明らかにした。Thy-1プロモーターではDre組換え酵素を発現させたが、実際に個体内でDre-rox系が働くことも確認できた。3)本研究期間内に新たな種マウスを作製したが、これはCre-loxPに加えφC31 integrase系も利用できるように構築されており、floxedコンストラクトが挿入可能となっている。φC31 系が動くことは既にin vivo実験で確認済みである。4)哺乳類Kox1遺伝子のKRABリプレッサードメインを用いたドキシサイクリン誘導系の確立を進め、細胞レベルでの実験による検証後、上述した新たな種マウスを利用して誘導系遺伝子発現Tgマウスを作製した。現在その検証を個体レベルで行っている。 初年度の進行がやや遅れたことから、現時点で当初の計画の8割程度が達成できた状況ではあるが、上述した結果に加え、研究期間内にPITT法の大幅な挿入効率改善にも成功している。引き続き研究を進めて各種リソースを整備するとともに、本研究成果を多くの研究者に還元していきたいと考えている。
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