研究概要 |
本研究では、プロサポシン(PSAP)とサポシン(SAPs)のマウス胚発生における生理機能の解明を目的として、以下の三つの研究課題を遂行した。一つ目は野生型の胚組織におけるPSAP/SAPsの時空間的発現変化を明らかにした。胎生早期(胎齢6.5-9.5日(E6.5-9.5))の野生型マウス胚ではPSAP/SAPsは栄養膜巨細胞と脱落膜細胞に高発現していた。胎生中期(E10.5-15.5)の臓側卵黄嚢ではSAPsが上皮細胞の巨大ライソゾームに局在し、胎盤ではPSAP/SAPsは海綿状栄養膜細胞や栄養膜巨細胞、脱落膜細胞に発現し、羊水中にはPSAPが分泌されていた。二つ目にプロサポシン欠損マウス(Psap KO)の胎生致死の原因究明を行った。Psap KO胚はE7.5から成長不良を呈し、E7.5の栄養膜巨細胞と臓側卵黄嚢上皮細胞でライソゾームの形態異常が認められた。E10.5以降の胎盤では海綿状栄養膜層が萎縮し、羊水中にPSAPは検出されなかった。三つ目にヒトプロサポシン強発現マウス(PSAP Tg)を用いて母体由来PSAP/SAPsの胎仔への影響を検討した。ヒトプロサポシンを強発現し、マウスプロサポシンを欠損するマウス(Psap KO, PSAP Tg/W)同士を交配し、母体がプロサポシンを強発現する場合でのPsap KO胎仔の表現型解析を行った。その結果、Psap KOはメンデルの法則に従った比率で出生し、胚の組織病理像も野生型と同等であり、Psap KO胚の胎生致死表現型は母体からのプロサポシンの供給によってレスキューされることが判った。以上の結果から、PSAP/SAPsはマウス胎生期において脱落膜、臓側卵黄嚢、胎盤などの胚体外組織のライソゾーム機能に必須であることが示唆された。
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