研究課題/領域番号 |
23700517
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
後藤 栄治 独立行政法人理化学研究所, 感染免疫応答研究チーム, 研究員 (40435649)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 胎生致死 / E3ユビキチンリガーゼ |
研究概要 |
MARCH-Vはミトコンドリア特異的に局在し、ミトコンドリアの分裂・融合に関与するE3ユビキチンリガーゼとして知られている。ミトコンドリアの分裂・融合は高次機能の維持に必須な現象であることから、我々はMARCH-Vの生理機能を明らかにするため、MARCH-V欠損マウスを作製し解析を試みた。その結果、MARCH-V欠損マウスは胎生致死であり、さらに詳細に致死となる時期を調べたところ、胎生10.5日目から致死となることが明らかとなった。次に、胎生致死となる原因を明らかにするため、胎生10.5日のMARCH-V欠損マウスの組織切片を作成し、HE染色およびTUNEL染色にて組織化学的解析を行った。その結果、MARCH-V欠損マウスの胎生期脳において、神経細胞層が未発達であること、さらに、野生型に比べTUNEL染色陽性細胞が有意に存在することが明らかとなり、このことがMARCH-V欠損マウスにおける胎生致死の原因であると考えられた。また、野生型およびMARCH-V欠損マウスの胎児から胎児由来線維芽細胞MEFを調製し、カルシウムイオノフォア(A23187)およびアクチノマイシンDを用いて、ERストレス刺激およびアポトーシス誘導の影響を検討した。その結果、いずれの場合においても野生型に比べ有意に細胞生存率の低下が認められた。これらの結果から、MARCH-Vは胎生期の脳の発生段階において、ストレス誘導性のアポトーシスに対する防御機構としての役割を担っているのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MARCH-V欠損マウスは胎生致死となることから、解析は容易ではなかったが、致死となる詳細な時期を特定でき、さらに、組織化学的解析から致死の原因ではないかと思われる異常を見いだせたのは当初の計画通りであり、評価できると思われる。今後さらに詳細なメカニズムの解明を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
MARCH-V欠損マウスの胎生期脳において、神経細胞層に異常が見られたことから、以下の点について研究を進める。(1)MARCH-V欠損マウスの胎生期脳から神経細胞を単離培養し、MARCH-V欠損の影響を検討する。(1-a) 蛍光顕微鏡及び、電子顕微鏡を用いてミトコンドリアの形態を調べる。(1-b) 細胞機能(増殖能・アポトーシス誘導に対する感受性・活性酸素発生量・ATP産生能・呼吸活性等)について検討を行う。(1-c) ミトコンドリアの分裂・融合に関与する分子(Drp1, Fis1, Mfn1/2)の状態(量的変化・局在・ユビキチン化の有無等)を検討する。(1-d)シナプスの形成状態を検討する。(2)MARCH-Vによるミトコンドリア形態制御の高次機能維持における役割を明らかにするため、神経細胞骨格蛋白であるNestinのプロモーター特異的にCre 組み換え酵素を発現するトランスジェニックマウス、Nestin-Creマウスと交配することにより、神経細胞特異的MARCH-V欠損マウスの作製を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用する研究費が生じた理由としては、当初、平成23年度の研究費が3割削減される旨の通達があったため、かなり抑えて研究費を使用していた。後に、3割削減は解除されたが、同様の削減が平成24年度も生じると予想されたため、可能な限り23年度分を24年度に持ち越した。23年度から持ち越した研究費は24年度分と合わせ、申請書にも記載した通り、MARCH-V欠損マウスの胎生期脳から単利培養した神経細胞を用いた解析に必要な、培養試薬、抗体等および実験で使用するマウスの購入・維持費に使用する予定である。
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