MARCH-Vはミトコンドリア特異的に局在し、ミトコンドリアの分裂・融合に関与するE3ユビキチンリガーゼとして知られている。ミトコンドリアの分裂・融合は高次機能の維持に必須な現象であることから、我々はMARCH-Vの生理機能を明らかにするため、MARCH-V欠損マウスを作製し解析を試みた。その結果、MARCH-V欠損マウスは胎生致死であり、さらに詳細に致死となる時期を調べたところ、胎生10.5日目から致死となることが明らかとなった。次に、胎生致死となる原因を明らかにするため、胎生10.5日のMARCH-V欠損マウスの組織切片を作成し、HE染色およびTUNEL染色にて組織化学的解析を行った。その結果、MARCH-V欠損マウスの胎生期脳において、神経細胞層が未発達であること、さらに、野生型に比べTUNEL染色陽性細胞が有意に存在することが明らかとなり、このことがMARCH-V欠損マウスにおける胎生致死の原因であると考えられた。また、野生型およびMARCH-V欠損マウスの胎児から胎児由来線維芽細胞MEFを調製し、カルシウムイオノフォア(A23187)およびアクチノマイシンDを用いて、ERストレス刺激およびアポトーシス誘導の影響を検討した。その結果、いずれの場合においても野生型に比べ有意に細胞生存率の低下が認められた。これらの結果から、MARCH-Vは胎生期の脳の発生段階において、ストレス誘導性のアポトーシスに対する防御機構としての役割を担っているのではないかと考えられた。 今後、組織特異的MARCH-V欠損マウスの作製を行い、MARCH-Vによるミトコンドリア形態制御の高次機能維持における役割を明らかにしていきたい。
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